車の年間維持費は50万円超…カードローンで不足を補う日々

さらに「親の資産」による打撃は続く。車好きの父親は高級外車を保有している。電車通勤のAさんは車を持っていないが、父親の通院治療のため2週間に1回の割合で送迎していた。「これも、お前にやる」という。車の維持には自動車税や自動車重量税、自賠責保険料の他にも、車検料やオイルなどの消耗品代、ガソリン代などが必要となる。走行距離や等級などで決められる任意保険料も月額約1万5000円かかり、年間維持費は50万円超に達する。

赤いビンテージポルシェ
写真=iStock.com/clu
※写真はイメージです

別荘に加えて、車の維持費までカバーするのは困難だ。しかし、父親の通院時に必要のため売却することもできない。「相続すれば資産は増えると思っていた。いつまで苦しい生活が続くのか……」。困窮したAさんはやむなくカードローンで不足分を補うようになった。

世話になった親には少しでも長生きしてほしいとの気持ちに変わりない。毎朝、顔を合わせればホッとしたような笑みを浮かべる父を見れば涙も込み上げる。しかし、住宅ローンに加えて別荘や車の維持費が重なり、家計は「火の車」状態だ。

父親が持つ土地などを含め相続時には1000万円近くを納税しなければならないことは税理士からも伝えられている。ただ、父親に残された現預金は少なく、それまでの維持費も考えれば相続税は分納せざるを得ないという。妻には予想される相続税額を伝えることもできないままだ。

別荘や車の維持費を購入した本人が払えなくなったら、すぐに売却を

総務省によれば、富裕層のステータスといわれる別荘は、約5800万世帯のうち0.5%程度が保有している。不動産の相続は現預金と異なり、分割することが面倒な上、現金化できるまで時間を要することも多い。Aさんの父親のように思いを込めた物件だったり、自分が死んだ後の財産をどのようにするのか話し合うこと自体を嫌ったりするケースも少なくない。

しかし、相続を「争続」としないためには、親が元気のうちに計画的な話し合いをすることが欠かせない。Aさんは持ち続けるという選択をしたが、別荘や車の維持費を購入した本人が払えなくなったのであれば、すぐに売却した方が良いだろう。

世田谷区などの自治体では「要介護3」以上の人に福祉タクシー券を支給し、予約料(迎車料)を免除。公共交通機関を利用することが難しい高齢者や、病気のため電車やバスで通院することが困難な人は、タクシー代が医療費控除の対象になる。親の病院への送迎も距離や頻度によっては、カーシェアリングやタクシーに切り替えた方が年間にかかる費用は抑えられる。それが円満な家族を維持するための方法であり、親の最後の役割と言える。

あなたは、思いがけない親の資産を見つけた場合、どうしますか?

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