トップの進退は自分の都合で決めるべきものではない
そして参院選の応援演説である。コロナ禍で大阪の住民が塗炭の苦しみをなめている時に、松井氏や吉村氏らが公務をほったらかして頻繁に他の自治体に入り、選挙応援に走ったことは「国政政党の幹部」の行動としては正しくても、「地方自治体の長」としては、どう見ても間違っている。
こういう維新のおかしな政治が10年間もまかり通ってきたのは「地方自治体の長が国政政党の長も務める」いびつな党のかたちのせいだと言ってもいい。
もしも維新が将来野党第1党になれば、代表は「次の首相」候補となる。参院選の時のような行動は許されない。維新はどこかで党のかたちを改めなければならない段階に来ていた。今回の代表選は、そのための良い機会にすることもできたはずだ。
しかし、松井氏一人のせいで、すべてぶち壊しになった。
政党トップの進退について、政界では昔から「政治家が自らの責任で決めること」という価値観が根強く、松井氏の辞任もさほど問題視されていない。
しかし筆者は、この価値観そのものに異を唱えたい。政党のトップたるもの、選挙に負けたり不祥事があったりして有権者からの求めで退陣を決断するとか、病気などのやむを得ない事情で退くとかいったことがない限り、定められた任期を最後まで務め上げ、その職責を果たし、任期全体の業績について審判を受けるべきなのだ。
代表選が世間的に全く盛り上がらなかったため、すでに忘れかけられている感もあるが、それではいけない。今回の代表選が「松井氏の、松井氏による、松井氏のための代表選」になってしまったことについて、本当にそれで良かったのか、維新の関係者はそれぞれが再び自分の胸に問うべきだ。
そして松井氏は、改めてなぜ自分は「辞任しなければならなかった」のか、その理由を自ら、誰にでも分かるように語るべきではないのか。