子育てに無関心だった夫と老後を過ごせるか

――小学校、中学校と子どもが成長するにつれて生活面での手はかからなくなりますが、勉強や進路が課題になってきますね。

【椰月】子どもの進路は家庭の一大事。そこで、夫が協力してくれるかどうかですよね。子どもの受験に熱心なお父さんもいるでしょうが、どちらかというと妻任せにする夫の方が多い。

椰月美智子さん
撮影=市来朋久

小説のなかでも、子どもが中学受験をすることに対して夫の範太郎は、最初は「地元の公立でいいよ」と言い、次は「本人が行きたいなら私立に行けばいい」となり、最終的に「そりゃあ、私立のほうがいいに決まってるだろ」と、どこまでも適当です。

わが家も子どもの中学受験を体験しましたが、夫は範太郎と同じような感覚でした。自分のやることが増えさえしなければなんでもいい、みたいな。母親とはすごく温度差がありますよね。

――妻にとっては、一緒に子育てをしてくれなかった夫と長い老後を2人で過ごしていけるのかというのは、考えてしまうところです。

【椰月】そうですね。でも、長男で一家の大黒柱たれと育てられてきた範太郎は、きっと変わることはないと思いますよ。実際問題、こういう関係の夫婦は簡単には変わらないと思うので、老後も無理に一緒に行動しようとはせず、自分の好きなことをやって別々に過ごすのがいいと思います。

家事をしてもらうために、なぜ褒めなければならないのか

――夫が改心する、変わってもらう手段はないのでしょうか?

【椰月】よく「家事をしない男性に家事をさせるには?」という人生相談に、「うまく持ち上げて、少しずつできるところから……」というような回答がされていますが、そんなの嫌じゃないですか。夫が皿洗いしてくれたら「うまくできたね」とか「ありがとう」なんて、全然言いたくない。「こっちはずっと何年も皿洗いしているんだよ」「あなたは1回でも『ありがとう』と言ってくれたことがある?」って言ってしまいそう。だから、本当に夫の意識改革をしたいなら、プロのカウンセラーのところなどに行くしかないのではと思いますね。

――椰月さんのように昭和生まれで50代ぐらいの女性は「子どもの世話は母親が見るものだ」と役割を押し付けられがちでしたが、20代、30代では、父親も子どもの面倒を積極的に見て、夫婦で協力しているカップルが増えていますね。

【椰月】その世代間ギャップは感じます。若い方は互いに思いやって家事を分担して、家庭を築いているカップルが多いですよね、頼もしいです。私も10代の息子たちには「自分の生活に必要な家事は自分でできるように」と口うるさく言っています。それでも、子どもたちは自分の洗濯物すら出してきませんけど……。ある意味、私は夫に怒ることで「夫婦がうまくいかなくなる原因はこうだよ」と、息子たちに見せつけているのかもしれません(笑)。