規制の次なる焦点…経口中絶薬に向けられた矛先
アメリカでは妊娠12週までの中絶は、真空吸引法が主流だ。だが、このところ妊娠初期の中絶に、経口中絶薬の使用が広がっており、規制の矛先が向けられている。
ガットマッハー研究所の調査によると、中絶件数のうち経口薬による中絶は2011年が24%、2020年には54%に増加した。掻爬法が主流である日本では未承認であるが、英製薬会社ラインファーマが2021年12月に承認申請をおこなっている状況だ。
経口中絶薬ミフェプリストンは、1988年にフランスで認可されて以降、80カ国以上で使われており、アメリカ食品医薬品局(FDA)は2000年9月に承認した。アメリカでは現在最終月経から70日以内(妊娠10週)まで認可されている。中絶の成功率は極めて高く、安全で効果的な経口薬として利用が広がっている(※1)。
※1:抗プロゲステロン作用を発揮し妊娠の継続を阻害し、子宮頚管を拡張する。子宮収縮作用のあるミソプロストールを24~48時間後に内服し子宮内容排出を促す2剤のコンビネーションは妊娠9週までなら98%の成功率がある。合併症頻度は2%程度といわれているが、予期される程度のマイナーなものが多く安全といわれている。過去20年で370万人が使用したのに対し、きちんとしたプロトコルを守れば防げた可能性の高い26人の死亡
経口中絶薬は利用拡大が続いていたが…
ミフェプリストンは2011年以降、FDAのリスク評価・緩和戦略(REMS)に管理され、病院やクリニックで直接処方を受けることや、妊娠週数の報告、患者の教育を徹底するなどの条件があった。しかし、2021年12月より直接処方の規制は撤廃された(※2)。
※2:2017年にアメリカ産婦人科学会などが直接処方は不必要としてFDAを提訴したことや、コロナパンデミック中の緊急措置で、リモート投薬後の自己観察で中絶が安全であった世界的な結果を受けて規制緩和が進んだ。2020年WHOではさらに、医療従事者の直接管理がない場合でも、十分な情報を得て、自己投与、自己観察することにより、経口薬による12週までの中絶が可能とし、そのためのプロトコルを発表している。
現在ではオンラインのみでの処方、または処方なしで薬局から直接入手できる。郵送での入手も可能だ。
アメリカでは、薬局による入手法をFDAで確立中であるが、今でも世界中の経口中絶薬の入手先を詳細にリストしているオンラインサイト「PLAN C」を参照し、薬局で入手することができるようになっている。