サイコロを振って割引率8割超えも

この夏にJR西日本から変わり種の切符が発売され、鉄道ファンがざわついている。その名も「サイコロきっぷ」。サイコロを振り、出た駅まで往復で利用できるきっぷだ。料金は1回5000円だ。切符はすべて大阪市内発着の往復で、目的地は北陸から九州まで全7駅。サイコロは6面しかないのに、7駅から選べるあたり、すでにお得感があるではないか。

行き先、通常料金、お得率は次の通り。

・芦原温泉 1万3380円 62.6%
・餘部 1万2060円 58.5%
・東舞鶴 9180円 45.5%
・白浜 1万1400円 56.1%
・倉敷 1万3360円 62.6%
・尾道 1万7300円 71.1%
・博多 2万9240円 82.9%

驚くべきは博多。なんと2万4240円もお得になる。割引率が8割超えなんて、こんな幸せなことがあっていいのか。サイトによれば、博多の当選確率は36分の1。36人に1人の幸運な人が、博多行きの大当たりを手にできる。ほかは白浜、餘部、東舞鶴、倉敷、芦原温泉が6分の1、尾道が36分の5とのこと。

それにしても元来、旅行とは行きたいところに行くものだ。お得になるのは置いといて、JRに行き先を決められるなんて前代未聞じゃないか! しかし、これに救われた思いになっているのは筆者を含む乗り鉄たちだろう。われわれは休みのたびに苦しめられるのだ。「嗚呼、どの路線に乗ったらいいのだ」このような毎度の悩みに「ここに行ってきなさい」と他から指令があると、案外楽ちんだったりする。

実際に試してみたら…

このサイコロきっぷ、是非ともやってみたい。と思ったが、筆者は都内在住である。利用するには、東京からまず新大阪まで出なければならず、すでに新幹線代が往復で2万7740円かかることになる。さらに、万が一、博多を引いてしまった場合、東京からいったん新大阪で降りて、また博多まで行く羽目になり「だったら東京から飛行機で行ったほうがいいじゃん!」という事態になりかねない。と文句を言いつつも、こうした妄想も楽しむ自分がいる。

というわけで、ごちゃごちゃ言わずにやってみた。クレジットカードを登録後、JR西日本のアプリでサイコロ画面を開き、STARTボタンをタップする。すると、サイコロがくるくる回り始める。ドキドキ。

JR西日本の「サイコロきっぷ」でサイコロを振っている最中の画面。
写真提供=東香名子
JR西日本の「サイコロきっぷ」でサイコロを振っている最中の画面。

ほどなくして

ジャーン!

JR西日本の「サイコロきっぷ」の行先決定画面。
写真提供=東香名子

「餘部に決定しました」

ど、どこ? よ、読めない……。と思った皆さんに説明しよう。餘部(あまるべ)駅は、兵庫県北部に位置するJR山陰本線の無人駅である。地上から高さ約40mのところに位置する駅で、美しい山陰の海を拝められる鉄道ファンに人気の駅だ。