「有事に対応する内閣」のはずだが、動きは鈍い
「有事の内閣を速やかに整えていくため、内閣改造を断行いたしました」
8月10日に内閣を改造した岸田文雄首相は記者会見に臨んで、こう改造の狙いを述べた。まさに日本を取り巻く状況は「有事」に他ならない。岸田首相自身、「新型コロナ、ウクライナ危機、台湾をめぐる米中関係の緊張、そして国際的な物価高」を挙げ、「わが国の内外で歴史を画するようなさまざまな課題」が生じているとした。その上で改造内閣を「有事に対応する政策断行内閣」だと位置付けた。
内閣改造前の8月5〜7日にNHKが行った世論調査では、内閣支持率が46%と前回7月の59%から急落しており、急遽前倒しで行ったとされる内閣改造は、支持率のテコ入れも期待された。
ところが、改造を受けて8月20〜21日に毎日新聞が行った世論調査では、支持率が36%と前回の52%から16ポイントも下落、内閣発足以降、最低になった。また、不支持率が54%と17ポイント上昇、支持を上回った。
政権発足時から最大の懸案としてきた7月の参議院選挙で大きく勝利したためか、「有事」という言葉とは裏腹に、内閣の動きは鈍い。新型コロナ対策では明確な方針を打ち出さないまま感染者数が激増、病床の逼迫を招いた。内閣を改造しても旧統一教会関係団体とのつながりが判明する大臣副大臣が相次ぎ、内閣の信頼自体が揺らいでいる。
物価対策で岸田首相が出した3つの指示は正しいのか
そんな中で、国民生活に大きく関わる物価対策については、8月15日に自らが本部長を務め関係閣僚が参加する「物価・賃金・生活総合対策本部」の20分ほどの会合に顔を出し、3つの指示を出した。
1つは小麦の輸入価格の上昇で、政府から国内製粉会社への売渡価格が10月から引き上げる見通しだったものを、「据え置くよう指示する」と発言。「早急に、対応策を具体化」するよう求めた。
2つ目は、エネルギー価格対策。ガソリンなどの「激変緩和事業」つまり、石油元売会社に助成金を出して小売価格を抑えている現在の政策を、期限の9月末で止めず、「10月以降の対策を具体化すること」を求めた。
また、3つ目として、「地域の実情を踏まえた効果的な電力料金対策を講じること」とし、電気代の負担軽減に向けて「地方創生臨時交付金」1兆円の増額を指示した。
その上で、「9月上旬をめどに、この本部において追加策をとりまとめる」とした。