海で繁栄したが「潜水病」に悩んだプレシオサウルス類

恐竜時代の海で繁栄した「プレシオサウルス類」は、日本では、「クビナガリュウ類」とも呼ばれているグループです。たくさんの海棲爬虫はちゅう類がこのグループに分類されています。文字通り、首が長い種類もいれば、あまり長くない種類も、首が短い種類もいました。大きな種類のサイズは、全長10メートル近くにもなり、サカナをはじめとして、多くの動物を狩っていたとみられています。

プレシオサウルス類(クビナガリュウ類)は、空気中で呼吸をすることで生きていました。そのため、しばしば海面から顔を出す必要がありました。

呼吸をすると、空気は肺だけではなく、血液の中にも取りこまれます。このとき、水中に深く潜ると血液の中により多くの空気が取りこまれていきます。深ければ深いほど、圧力が高いからです。

深海で血液に取りこまれた空気は、浅い水深まで浮上したときに、小さな空気の泡(気泡)となります。この気泡が血管の中に詰まってしまうことがあります。「潜水病」と呼ばれる症状で、ヒトにもみられるものです。

プレシオサウルス類の多くの種に、この症状がみられています。つまり、プレシオサウルス類は海の中を上下に頻繁に移動することで、潜水病にかかっていたようです。獲物を追いかけるためだったのか、天敵から逃げるためだったのか。海で暮らすのもたいへんだったようです。

「小さな傷」が命とりとなったステゴサウルス

背中に並ぶ骨の板と、尾の先端にある4本の大きなトゲ。そんな特徴をもつステゴサウルスは、アロサウルスと同じ時代に、同じ地域に生きていた植物食の恐竜です。

ステゴサウルス
イラストレーション=ACTOW(徳川 広和・山本 彩乃)
背中に並ぶ骨の板と、尾の先端の4本のトゲが特徴的なステゴザウルス(土屋健『ほんとうは“よわい恐竜”じてん それでも、けんめいに生きた古生物』より)

ステゴサウルスは、大型肉食恐竜の獲物の一つでしたが、襲われるばかりではありませんでした。ときには尾の先端にあるトゲを使って強烈な反撃を行い、アロサウルスに大きなダメージを与えていたことがわかっています。

しかし、そんな“勇者”も、病気に悩まされていました。一見すると、元気に見えるステゴサウルスも「骨髄炎」という感染症に侵されていた個体がいたみたいです。

骨髄炎とは、骨や、骨の中心部にある骨髄という部分が腫れることです。腫れがひどいと、血液の流れが滞って骨の一部が死んでしまいます。もっとひどい場合には、骨だけではなく、動物そのものが死に至ることもあります。