ニューヨーク市議会議員は地元紙デイリーニューズに寄稿し、パンデミックによるフードデリバリーの増加も一因になったと示唆している。配達員たちが趣味用途のモデルを業務用として一日中酷使していることや、盗難防止の観点から宅内で保管していることで、望まざる火災を招いてしまっていると議員は指摘する。
屋外保管は要注意…発火事故が相次ぐ理由
リチウムイオン電池は、スマホなどにも多く用いられている一般的なバッテリーだ。比較的コンパクトで軽量にできる反面、化学反応により発火しやすい弱みがある。
米テックサイトの「テック・レーダー」は、低品質の製品を中心にバッテリーセルが損傷・過熱することで、内部に封入された電解液が発火することがあると説明している。ひとつのセルが過熱すると周囲のセルに熱が伝わり、次々と熱と圧力が高まる連鎖反応を引き起こす。
もともと取り扱いに一定の注意を要するこのバッテリーに、eバイク特有の難しさが加わっている。リチウムイオン電池は一般に、直射日光や高温多湿の場所を避けて保管することが推奨される。夏場の車内など高温の場所にスマホやバッテリーパックなどを放置し、爆発に至る事故が国内でもたびたび起きている。
だが、eバイクはその性質上、過酷な屋外での使用が主となる。延焼の危険から屋内での保管は推奨されないため、野ざらしの屋外で充電・保管するケースも多い。粗悪な製品ではこのような環境に耐えられず、発煙や爆発に至っているようだ。
「充電しっぱなし」はNG
eバイクを安全に使用するために、どのような点に留意すればよいのだろうか。9ニュースは消防当局によるアドバイスとして、eバイクを充電器につなぎっぱなしにしないよう呼びかけている。
また、バッテリー付きの自転車本体や交換用バッテリーを購入する際、信頼できるブランドを選ぶことも大切だという。カスタムメイドのeバイクを提供するファット・eバイク社の共同設立者は、同局に対し、「アリババやアマゾン、あるいはノーブランドの無名サイトで購入してしまうと、バッテリーのリチウムイオン・セルの品質、製品の品質、組み立て品質、充電器の品質などは、誰にもわかりません」と指摘している。
米eバイク業界のコンサルタントは、自転車業界向けニュースサイトの「バイシクル・リテイラー」に対し、パナソニック、LG、サムスン製のバッテリーを推奨している。一方で安価な中国製については、安全性の観点から勧められないとの立場だ。
過去には国内でリコールも、危険性を知り正しい利用を
日本でも電動アシスト自転車の普及が進んでおり、この傾向自体は好ましいことだ。自動車や原付と比べれば排気ガスを生じないことから環境負荷が低いほか、アシスト付きとはいえ一定の脚力は求められ、健康増進効果も期待できる。気の向くままに走ったり、地元のスポットの魅力を発見したりと、自転車目線ならではの気づきもあることだろう。
同時に、適切な注意を向けることも必要だ。全米で発生しているような悲惨な火災の事例は、原理的には国内でも起こり得る。とくに、個人所有のアシスト車のバッテリーが劣化した際、ネットなどで安価な互換バッテリーを購入して使わないよう留意したい。
また、大手の製品だからといって100%安心というわけではない。消費者庁は今年5月、ブリヂストンサイクルが販売するバッテリーの充電中に火災警報器が鳴動し、3人が軽傷を負う事故が起きたと公表した。同型のバッテリーを搭載するブリヂストンおよびヤマハ製のアシスト車、計30万台以上がリコール対象となった。
2020年には、パナソニック製のアシスト車に発火のおそれがあるとして、バッテリーの無償交換が案内されている。産経新聞は当時、対象となるバッテリーが34万個以上になると報じている。
シェアサイクルにおいては、街角のステーションでの駐輪中に充電を済ませる方式のものも登場している。こうしたサービスが必ずしも危険というわけではないが、無人のステーションで充電が行われるという性質上、万一発火した際には初動が遅れる可能性も否定できない。
秋に向けてサイクリングに最適なシーズンが到来するが、電動アシスト自転車の特性を正しく理解し、安全で快適な使用を心がけたい。