繁殖期が来るたびにつがい相手を確保すべく争う種もいる

外見上はオスとメスの区別がつかないペンギンですが、厳密には、わずかながら性的二型性(有性生物における生殖器以外の性別による相違のこと。体の大きさや色彩上の違いなどがある)を呈しており、体格とくちばしの大きさは、メスに比べオスのほうがやや大きめです。

留鳥(渡り(回遊)をせず、一年中同じ場所または地域で生活する鳥のこと。渡りをする種の中にも、個体によってはその場に留まるものもいる)として暮らすペンギンであれば、つがいはつがいのまま、一年じゅう一緒に過ごしますが、渡りをするペンギンの場合、繁殖期が来るたびに毎年、つがい相手を確保するためにオスが争うことになります。こうした種では性的二型性もより明白に表れています。

不思議なことに、巣の場所をめぐって最も激しい争いを繰り広げる種は魚を餌とするものばかりで、獲物の魚をしっかりくわえておくためにくちばしの先端がかぎ状になっています。このかぎは武器としても有効であり、敵のオスの顔に切りつけたり、ペンギン研究者の腕に一瞬にして切り傷をつけたりできるものであると、多くの研究者が身をもって学んできました。

メスはオスをどうやって見分けているのか

場所を確保したら、オスが次に取りかかるのは、せっせと巣を作り上げ、メスを求めてアピールすることです。新聞に恋人募集広告を載せるわけではありませんが、それに近いことをします。巣の上か近くで、オスが求愛のディスプレイをする、というのが一般的です。腕(翼)をばたつかせたり、鳴き声を張り上げたり、パブで騒ぎたてる酔っ払いのごとく振る舞うのです。この行動は社会的伝染を招くことが多く、コロニー内のオスたちの間で腕をばたつかせながら大声で歌うのが大流行となります。

オスのこうした行動は、どのオスもそっくり同じに見える中、メスがどのようにしてつがい相手を見定めるのか、手がかりを与えてくれます。オスの鳴き声は一羽一羽で異なり、まるで指紋のように個体を識別できるだけでなく、メスにとっては、そのオスにまつわる重要な情報源となるのです。