ペンギンは一羽のオスと一羽のメスがつがいとなる一雌一雄制の動物だ。このため「一度つがいになると一生添い遂げる」と紹介されることもある。生物学者のロイド・スペンサー・デイヴィス氏は「結婚と似ていると思うかもしれないが、その意味では離婚率50%の種もいる。ペンギンの世界では離婚や不倫は珍しくない」という――。

※本稿は、ロイド・スペンサー・デイヴィス『ペンギンもつらいよ ペンギン神話解体新書』(青土社)の一部を再編集したものです。

氷山にペンギン
写真=iStock.com/Sylphe_7
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ペンギンは恋愛に関しては図抜けて現実主義

ペンギンは一雌一雄制の動物です。一羽のオスと一羽のメスがつがいとなり、力を合わせて子育てをする、という意味です。一雌一雄制と聞くと、結婚と似たようなものに感じられ、結婚というと人間と同じように思えますが、このような見方はペンギンにまつわる最大の誤解のひとつを招く要因となっています。雑誌の特集でも、生きもののドキュメンタリー番組でも、ペンギンについて取り上げたものをご覧いただくと、おそらくどれもこう言っているでしょう。「ペンギンのつがいは生涯、連れ添います」と。

本当のところ、破局だの、浮気だのといった修羅場は、ペンギンたちの間でも珍しくないのに、その現実から目を背け、人間の世界で理想とされるロマンチックな結婚観をペンギンに押しつけているかのようです。恋愛に関して言うと、ペンギンは実は、世界一と言ってもいいくらいの現実主義者です。もしペンギンに讃歌なるものが存在したならば、彼らはきっと「愛への讃歌」を選ぶことでしょう。