「ボクシングが一番痩せやすいよ」。そう聞いて入会したボクシングジム。聖心女子大出身で、女性の意識行動研究をするラボの代表を務める山本貴代さん(50代)の当初の目的はダイエットだったが、週5でジムに通ううちに心もカラダも激変した。本人による体験手記をお届けしよう――。
ボクシングジムにて
写真=筆者提供
右から筆者、ジム会長の川島郭志さん、筆者の友人の焼き菓子店オーナー。

元世界チャンプのジムに週5で通う50代女性の“壮絶”体験

「え、漏れちゃう……」

日常生活の中に、縦で跳ぶ動作を続けるシーンはない。だから50代の私のカラダが縄跳びに対応できないのも無理はない。「失禁するのか、私は、ここで?」。ぴょんぴょん跳びながらこらえるが、ふくらはぎはパンパン、息も苦しい。心臓が悲鳴を上げている。

無理だ、やっぱり無理だったんだ……。

この年になって、まさか私が縄跳びをやるとは。自分で言うのもなんだが、聖心女子大出身でかつては“お嬢さん”と呼ばれたこともあったのに。でも、もう後戻りはできない。ボクシングの基本は漫画・アニメ「あしたのジョー」でもおなじみの縄跳びなのだ。やるしかない。

縄跳びをする山本氏
縄跳び1000回(写真提供=筆者)

昨年末、私・山本貴代は「川島ボクシングジム」(東京都大田区)に入門した。プロ選手も養成する本格的なジムだ。当然、格闘技経験など一切ない。それでも、快く受け入れてくれた。

入会のきっかけは、コロナ太りだ。何としてもダイエットしたい。

試合も練習も3分刻みで動き続け、ヘトヘトになるボクシングは、「一番痩せるよ」と聞いて「なら、やりたい」と思っていたが、ツテがないとなかなか入門する勇気がわかない“男の世界”である。しかし、繰り返すリバウンドに、「いいかげん終止符を打て」という天からの声が聞こえ、「やるなら本格的に」と近所のジムの門を叩いた。「体験してみますか」との優しい声掛けを拒み、即入門だ。やれば、できる。

そんなこんなで、人生半ばを過ぎたのに危うく漏らしそうになったわけだ。

ジムでは、バンテージの巻き方から始まり、ボクシングのノウハウをスーパーフライ級元世界チャンピオン6回防衛の記録を持つ川島郭志会長が、丁寧に指導してくれる。プロになるわけではないおばさんに、世界チャンピオンが自ら日々教えてくれる習い事などない。

いろいろと決まり事もあった。挨拶が基本。一人ひとりに挨拶をするところから始まる。これが中学時代の部活のようで新鮮だ。「挨拶は短く」と会長。1階のガラス張りで中が見えるジム。通りすがりの人たちがちらっちらっと見ていく。