日本のように、家の近所にあるからといっていきなり大学病院にかかることはできないのです。この皆保険とフリーアクセスは一見、素晴らしいものに思えると思います。

しかし、実際には良いことばかりではありません。日本では気軽に医療機関を受診する人が増え、国の医療保険財政を圧迫し続けています。

政府は2022年10月から、原則1割だった75歳以上の高齢者の自己負担を引き上げることを決定しました。具体的には個人年収200万円以上、夫婦で年収320万円以上の世帯は窓口負担が2割になります。

こうした自己負担増の流れは今後も続くのは間違いないでしょう。裕福な人にはたくさん払ってもらい、困窮している人の負担は軽くすることになるはずです。健康保険税の額が少しずつ上がっていくことも考えられます。

保険適用は「致死的な病気」に絞られる

保険適用される病気も、少しずつ限定されていくでしょう。治療をしなければ患者さんが命を落とす確率が極めて高い「致死的な病気」については国で面倒を見るけれども、そうでない病気は国は面倒を見ない、という方向に進むと思われます。

「致死的な病気」として想定されるのは、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血、がん、結核など。命の危険に直結しない「非致死的な病気」としては花粉症、皮膚炎、虫歯、骨折、軽度の狭心症などが挙げられるでしょう。「非致死的な病気」で病院にかかると相当な金額を払わなければなりませんから、薬を買って自分で何とかすることになります。

すでにこの流れは始まっています。医療用医薬品と同じ成分の医薬品が薬局やドラッグストアで売られるようになってきているのです。

薬局の商品陳列棚
写真=iStock.com/katleho Seisa
※写真はイメージです

かつては、医師が処方する「医療用医薬品」のほうが、薬局やドラッグストアで買える「OTC医薬品」(処方箋なしで買える薬)より成分が強めでよく効く、と言われていました。

現在は、医療用医薬品の成分をOTC医薬品に転用した「スイッチOTC医薬品」が多数登場しています。認知度は低いものの、2017年には「セルフメディケーション税制」がスタートし、薬局やドラッグストアで購入した薬代を所得控除できるようになりました(対象になる薬にはレシートの項目に★などの印が付いていますので、ご覧になってみてください)。

そうなると、わざわざ病院へ行って医師に薬を処方してもらう理由は薄れていきます。今後、この流れがさらに加速していくのは間違いないでしょう。

「長生きの質」は経済力に左右される…

現在では医療技術が発達し、私たちの治療の選択肢は昭和と比べて格段に増えました。しかし、今のように誰もが自分が好きなように病院にかかり、治療を選べる状態は長くは続かないのではないか、と私は考えています。