日本も真似しようとした「エネルギー転換」の末路

これを、「大金はかかったが、ベルトとズボン吊りがあってよかった」と考えるか、「なぜ、こんな無駄金を負担させられるのか」と考えるかは、人それぞれかもしれない。

ただ、事実として、ドイツが自慢し、日本が真似ようとしていた「エネルギー転換」政策は、巨大な負担を国民に強いた。再エネ業者の利益の多くは、「再エネ賦課金」という名で電気代に乗せられているので、隠れた税金のように、逃げ場のない全国民を直撃し、ドイツの電気代は今やEUで一番高くなった(ドイツでは、現在の急激な電気代の高騰を受け、消費者保護のため、再エネ賦課金を今月から停止する)。

風力発電所
写真=iStock.com/iantfoto
※写真はイメージです

さらに最近ではそこに、SDGsという名の下で進んでいるさまざまな政策が加わり、EVを買う人への補助や、意味不明の「持続可能な経済活動」の原資が、国民の血税からどんどん持ち出されている。EVは、庶民には高嶺の花だが、それを買える金持ちの受け取る潤沢な補助金は、庶民が負担しているのである。

ドイツも日本も国民はバカにされている

その挙句、いつの間にか国民は、ガスも電気も逼迫するという隘路に導かれ、ドイツでは、冷たい水で手を洗えとか、食洗機はいっぱいになるまで動かすなとか。ハーベック氏は、自分もシャワーを浴びる時間を短縮したと述べており、あたかも見習えと言わんばかりだ。ちなみに、これは日本も同じで、冷房の温度は下げすぎるな、でも、熱中症には気をつけろ。ドイツも日本も、国民はあまりにもバカにされているのではないか。

ドイツの多くの自治体は、シュタットヴェルケと呼ばれるガスの発電所を運営し、地域の電気や暖房を一括で賄っているが、政府は現在、いざという時に、そのガスを禁止し、石炭・褐炭に変えさせることのできる法律を策定中だという。しかし、そこまでしながらも、現在、動いている最後の3基の原発は、予定通り今年の終わりで停止するという。

ただ、もし、本当に国民のことを考えるなら、石炭・褐炭火力を全開にするよりも、まだ動いている原発の稼働延長に踏み切るべきではないか。3基の原発と、再エネと、石炭火力の組み合わせならば、ブラックアウトの危険は軽減するし、CO2削減目標もとりあえずは担保できるかもしれない。そうしながら、ガスの備蓄を増やす算段をすればいい。

ところが、ドイツ政府は原発の稼働延長というオプションをかたくなに拒み、国民に耐乏生活を強いるほうを選ぼうとしている。これではイデオロギーか、単なる意地だが、それが、国民の利便や産業の保護、それどころか命よりも優先されている。