そこで同社が頼りにしてきたのが、売り場の最前線に立つ約9000人のパート従業員である。考えてみれば彼女たちパートの多くは家庭の主婦であり、同じ主婦である顧客の潜在ニーズをよく理解している。毎日顔を合わせていれば、自然と会話が生まれ、メニューの悩みや調理方法の疑問点などにも対応していくことができる。
川野会長は「彼女たちにイキイキと働いてもらいながら、顧客のニーズに応えていく知恵を出してもらうのが一番。これからは一店ごとに地域に根ざした『個店経営』がより重要になってくる。それには店長一人だけでなく、当社が『パートナーさん』と呼ぶパート従業員の人たちに権限を委譲していくことが大切だ」と語る。
実は同社がパートへ一段の権限委譲を行うようになった一つのきっかけがある。十数年前にある店舗で、販売している生鮮品や食材をパートが自宅に持ち帰り、料理見本をつくって店内での展示を始めたところ、顧客から大好評を得た。それから多いときには50種類もの見本が並ぶようになったことだ。
「そうした個々の成功事例を横展開していくことが重要。それもただ真似するのではなく、店独自の特徴を出していく。例えば、千葉県内の店で地元の銚子魚港でサンマが大量に水揚げされたと聞けば、安く仕入れて、新鮮なサンマを使ったメニューを提案するという具合に」と川野会長は話す。
いまや同社のどの店舗でも見ることができる先ほどの料理見本にしても、またそのレシピを記した手作りの用紙にしても、一人ひとりのパートが考案したもの。それに合わせた商品の仕入れについても、パートに裁量が与えられている。だから商品が売れたときの喜びは格別。同じ店の経営に携わる「パートナー」として貢献できたと実感できる瞬間だからだ。