業界内屈指の経常利益率の良さ

オオゼキの15年度から21年度までの業績は確かにいいのですが、売り上げは着実に増加という感じで、急速に拡大はしていません。粗利率は1%ほど上がっていますが販管費も同様に上がっています。結果的に22年度は経常利益率が6%台に落ちていて数字上は伸びていないように見えます。

オオゼキ決算数値より筆者作成
出所=オオゼキ決算数値より筆者作成

しかし、これを同業他社と比べると、伸びていないように見える数字も、他社をしのぐ高いレベルであることが分かります。

粗利率が高いことで高い営業利益率を維持するオオゼキ

売り上げは業界大手に見劣りしますが、粗利は数ポイント高く、営業利益率も業界トップのオーケーと並ぶ高さです。

実はオオゼキは、堅実な経営を続けてきている隠れた高収益企業なのです。むやみやたらに出店せず、効率が悪ければ好立地からの退店も辞さない。

派手な成長をせずに、着実に高い利益を稼ぐスーパー。その狙いはどこにあるのでしょうか。

オオゼキ創業者が大切にしていた3つのこと

私が創業者の故・佐藤達雄氏に初めてお会いしたのは99年頃です。当時、私は「顧客満足度経営」というテーマで講演をすることが多く、そのモデル企業の一つとしてオオゼキの顧客第一の経営姿勢を知り、お話を伺いに本社に伺ったのです。

その際にオオゼキの強みについて次の3つのポイントを教えてくれました。

1.お客さまの声を集め続ける
2.一人一人に任せる
3.自分で考えるクセをつけさせる

オオゼキでは「お客さまの声に敏感になる」ようにすべての従業員が教育されています。売り場のあらゆる場面で、一人一人のお客さまの声を集めているのです。

つり銭間違いでわざわざお客さまの家に訪問してお釣りを返金したり、お客さまが他のスーパーで買ったものを返品してきても快く応じるといったことも、当時は当たり前のように行っていると聞き私は驚きました。

お客さまの声を集めるには、組織のトップ自らがお客さまの声を拾う努力をすることが必要です。今の現場で何を求めているのかをトップが真摯に追いかけるから声が集まるのです。

創業者の佐藤達雄氏は、当時、次のようにおっしゃっていました。

「失敗を怖がらせて社員が冒険しなくなるほうが怖い。何かの商品が一つだめになるよりも人間をだめにすることのほうが怖い。だから、うち(の会社)はなんにも分からない新人にも仕事をどんどん任せるんだよ」
「個店主義というのは仕事をやりたい人を採用して、やりたいことをやらせることにその真髄がある。だから仕事を任せるんだ」
「お客さまを大切にする」という企業理念をどこまで徹底できるかが生命線だ。お客さまにとって何が必要か、何をすればいいのか。何を仕入れるべきか。お客さまが欲しいと言ったものは必ず仕入れて品ぞろえしていく。だから無駄もあるが、それが地域のお客さまにとっての信頼につながるのだと思う」