骨粗しょう症の予防にも効果が期待できる

他にも、納豆菌が作るビタミンKはカルシウムの吸収を促進するので、骨粗しょう症の予防にも効果的です。大豆のイソフラボンの効果もあります。味噌のように、塩分が多いというリスクもなく、これだけのメリットを兼ねそなえている納豆の他に、日本人の腸内環境を古くから守り続けてきた食べ物はないと言いたくなります。

納豆
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納豆菌は悪玉菌の増殖を防ぐ作用もありますが、腸内で3~7日しか生存できません。そのため週に1~2回以上は補充の意味で食べたほうがいいと思います。ちなみに私は、納豆を毎日2パック食べます。買い物に行ったら納豆を買うのを習慣にして、常に余裕を持って冷蔵庫にストックしています。

芸術家や食通として知られる北大路魯山人きたおおじろさんじんは納豆を食べる前に100回混ぜて粘り気を出したそうです。私は納豆をそのままでいただくのが好きですが、うどんのつけ汁に入れてからかき混ぜて泡立て、これに冷やしたうどんをつけながら食べるのも好きです。

つゆが少なくなったら、さらにかき混ぜると泡がまた立ちます。この食べ方は、納豆をよく食べる福島県の方から聞きました。粘り気や糸を引くのが嫌いな人は、大根おろしを加えると食べやすくなりますよ。

快便を促す奄美大島の“発酵飲料”

漬物を漬けたことがある人はわかると思いますが、漬けるときにはわざわざ乳酸菌を入れません。それでも漬物が出来上がるのは、野菜自体に乳酸菌が付着しているからです。野菜に塩をして漬け込むことで、熟成と乳酸菌による発酵が促進し、発酵食品独特の酸味やうまみ、食欲をそそる香りが生まれます。

また、ぬか漬けはまず乳酸発酵が起き、そのあと酵母が発酵の過程を受け継ぎます。食べる前に水でぬかを洗い落とすと、ほとんどの菌が失われてしまうので、ペーパータオルなどでぬかを軽く拭き取る程度にしてください。

白菜漬けや野沢菜漬けは、洗わずそのまま食べられるので、効率よく乳酸菌を摂取できそうですが、塩分が心配です。長野県には塩を使わず乳酸発酵させる「すんき漬け」がありますが、これなら塩分も気にせずたくさん食べられそうです。

奄美には「魚味噌」の他にも独特の発酵文化が根付いています。私の興味を引いたのは「ミキ」という発酵飲料。見た目は飲むヨーグルトのような白濁色の液体で、作り方はいたってシンプル。

粥状にした米を50度ほどに冷まし、すりおろした生のさつまいもを加えるだけです。現在は市販品を買うことも多いようですが、かつては家庭ごとに作っていたといいます。ミキを研究室に持ち帰って解析したところ、1ミリリットルあたり1億個近くもの乳酸菌が見つかりました。まるでお米のヨーグルトです。おそらくいもに含まれるロイコノストックという乳酸菌が米を発酵させると考えられます。

これを飲んでいる、おばあさん、お母さん、娘さんの3世代のウンチには、ミキを飲んで摂取したと思われる乳酸菌も多くいました。もちろん皆さん、快便です。