義父母の裁判

別居状態となった義両親は、義父が夫に「マンションの売却代金を全額寄越せ」としつこく言ってきていたため、市原さん夫婦は2019年1月に離婚調停を起こし、半分義母のものとすることを認めさせようとした。

だが義父は、「専業主婦だったあいつの貢献度は、せいぜい認めても3分の1程度だ」と言って半分渡すことを拒否。調停は難航し、離婚は認められなかった。

ところが2019年11月、義父が「マンションの売却代金全額の返却」を求めて弁護士を立て、息子である夫を訴えた。さすがに「そこまでするか?」と呆気にとられた市原さん夫婦だったが、訴えられてしまっては受けて立つより他はない。こちらも弁護士を依頼し、弁護士の提案で義母を原告として義父との離婚裁判を起こす。

すると義父側の弁護士が、要求額を減らし「マンションの売却代金を半分ずつ分ける」ことで、和解を持ちかけてきた。市原さん夫婦は考えた末、これに応じ、裁判は幕を閉じた。

アパートの渡り廊下
写真=iStock.com/Torsakarin
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しかし、それでも義父は諦めなかった。離婚裁判では離婚に応じないだけでなく、義母分のマンションの売却代金にも執着し、返せ返せと言ってくる。

埒が明かないと思った市原さんは、義父の家に義母を連れて行き、「お義母さんは認知症になっていて、この先お金が必要なんです。(売却代金の)半分、(裁判で和解した通り)お母さんにあげてください」と直談判すると、ようやく半分義母に渡すことと別居を認め、離婚裁判も終了。

2021年8月。義母の認知症が進んできたこともあり、先を見据えて介護施設の見学を始めた市原さん夫婦と義母。良いグループホームが見つかり、一応申し込みだけしておいたところ、11月に「部屋に空きが出ました」という連絡が入る。

まだ自分のことは自分でできていた義母を施設に入れて良いものか、市原さんは迷った。だが夫は、その頃やりたいことを見つけて仕事を辞めた市原さんが、家で義母といる時間が長くなることを心配。入居を決断した。