怒れる組織を抑えるポイント①「休息」と「相互コミュニケーション」を仕事に

それでは、組織はどのようにしたら健全になれるでしょうか。

いつも元気で絶対に疲れない人だけ集めれば、まずスケープゴートは生まれないでしょう。しかし、そんな人は世の中にはいません。いるならばそれはすでに人間ではなく、ロボットに違いありません。

組織とは生身の人間の集まり。上司であっても部下であっても、日々、疲労の大波小波をやり過ごしながら生きています。

まずは生身の人間とは「疲れるものなのだ」と認識すること。他のメンバーも、そしてあなた自身もエネルギーには限界があるのです。

また、組織内の疑心暗鬼ムードは、少なからずお互いの情報不足からくることが多いのです。ネガティブな雰囲気は、ちょっとしたコミュニケーションの積み重ねで、驚くほど解消されます。

もし上司の顔色が悪かったら、「売り上げが悪いのか」「私のミスのせいで機嫌が悪いのか」などと考えてしまいますが、風邪気味だと知っていれば「大丈夫かな」といたわりの気持ちが生まれるでしょう。部下が提出してきたレポートを見て、あまりよくない出来だったとしても、作成に四苦八苦している姿を見ているか見ていないかで、心証が大きく変わることもあります。

2段階職場では、仕事を回すことだけで精一杯、とても休養をとったり、相互のコミュニケーションに時間を割く余裕はない、と感じるのが普通です。ところが、そこであえて、仕事として「休憩」と「相互のコミュニケーション」を入れこまなければならないのです。

これは、戦場という厳しい環境でも、全滅する部隊とそうでない部隊を分けることになる重要なポイントの1つなのです。

怒れる組織を抑えるポイント②小手先より「上司の腹決め」

危機にひんした部隊の長がやらなければならないもう1つの決断が、「やらない業務」を決めることです。「休養してくれ、自分で仕事量を減らしてくれ」と言うだけでは何も進みません。トップが、これはやらなくていい、と明言しないと、業務量は減らないのです。

もちろん業務量が減れば、成績も下がります。その責任を負うからこそ上司としての給料と尊敬をもらっているのです。

組織が普通の状態のときは、人間関係も疲労のコントロールもメンバーに任せておけば大きな問題になりません。しかし、2段階職場になったら、その長が覚悟を決めないといけないのです。メンバーはそれを知っているので、何も手を打たない上司には、怒りが向きます。

ちなみに、2段階職場になると、通常のメンタルヘルスケアも崩壊します。通常、不調者をいち早く見つけ、休養などの対応をするのですが、これを2段階職場でやると、一人の不調者を休ませると、その分の仕事を余裕のないメンバーでフォローせざるを得ず、結局三名の不調者が出るということになるのです。通常のメンタルヘルスケアで何とかできるものではありません。

2段階職場の場合、組織全体の怒りを抑えるには、小手先の対処より、上司の腹決めが重要になります。