進学や就職、マンション購入でも待遇が全然違う

背景にあるのは、中国独特の戸籍制度だ。上海で生まれ育った人々は都市戸籍(上海の個人戸籍と呼ばれるもの)を持つことができ、進学や就職、マンション購入などでも常に優遇されているが、地方出身者は基本的にそれを持つことができない。

地方出身でも、上海でホワイトカラーの職に就いている人は、上海人とは異なる都市戸籍(団体戸籍と呼ばれるもの)に入ることができ、社会保障もあるが、出稼ぎ労働者の場合、それもないため、病院にかかることすら難しい。彼らはただ、上海人がやらない仕事をして、お金を稼ぐためだけに、上海に住んでいるのだ。

上海の人口約2500万人のうち、外地から来た人々の人口は約1030万人。さらにそのうちの半数以上が出稼ぎ労働者だといわれている。デリバリーの配達員は約2万~3万人いると推定されており、その他、家政婦や店員、清掃員、工場労働者、建設現場の作業員などがいる。彼らは近隣の省をはじめ、遠くは四川省、東北地方などから来ている場合もいる。

2021年2月、コロナウイルスを防ぐためにフェイスマスクを着用し、混雑した南京路を歩く人々
写真=iStock.com/Robert Way
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仕事がないのに、農村に帰ることも許されない

彼らの給料は配達員とほぼ同じくらいか、やや低いこともあり、店員や工場労働者の場合、勤務先が手配した社宅のような場所で共同生活を送っている。家賃は安く、職によっては無料で1日2食提供してもらえるなど、少ない給料でも生活をする上で問題はないが、困るのは自分が病気になって働けなくなったときや、今回のロックダウンのような非常時には何の保証も受けられず、すぐクビになる可能性もあることだ。

ロックダウンで飲食店や工場の稼働が止まっている今、一部の企業では給料も支払われないのに交通がストップし、上海を出て農村に帰ることも許されないため、狭い社宅に閉じ込められているという、がんじがらめの悲惨な状態に置かれている。

中国ではトップ20の大学を卒業した新卒者の初任給が2021年に初めて1万元(約20万円)を超え、20代の会社員で月収3万元(約60万円)以上という「中間層」も大勢いるし、有名企業ともなれば、さらに多い。中国国家統計局の2020年の統計では、都市部と農村部の収入格差は約20倍といわれているが、実際にはもっと大きいだろう。