大前研一●ビジネス・ブレークスルー大学学長。1943年福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院修士課程修了。MIT工科大学大学院博士課程修了。工学博士。最新著『訣別 大前研一の新・国家戦略論』(朝日新聞出版)は「大阪都構想」の理論書でもある。

大前 東京都の場合も、公的施設にある自動販売機の1台に至るまで各議員さんの名前(利益)がついている。いわゆる、ひも付きですから。東京国立近代美術館の絵も1枚1枚画商が違っていて、その画商に議員がくっついている。だから例えば1億円を超える絵は議会の承認が必要、という縛りがかかったら新しい購入品は途端に(承認が必要ない)1億円以下に全部なってしまいました。現在の行政組織というのは、どこもかしこも利権の巣窟なんです。

今回、選挙の洗礼を受けて橋下市長という太陽が昇った。ロシアの有名な作曲家、ムソルグスキーの代表作である『禿山の一夜』のような宴会はお開きになった(曲の内容は、悪魔の集会に出くわした旅人の恐怖や滑稽さを表現したもの)。でもしばらくすると、この連中は懲りない面々ですから、暗闇をつくってまた動き始める。短期間で片っ端から退治してしまうことが大切です。

橋下 これから松井一郎大阪府知事と僕とで、今まで大阪に横たわっていて、手つかずだったありとあらゆる問題について、一定の方針を立ててどんどん解決していきます。しかし、今の改革路線というのは属人的なものでしかないですから、制度的に担保しなければいけません。これまでは選挙で方向性の違う知事、市長が選ばれて、大阪の課題が何一つ解決されなかった。選挙に影響されることがないように大阪全体の指揮官を1人にするのが大阪都構想なんです。

※すべて雑誌掲載当時

(小川 剛=構成 市来朋久=撮影)