死ぬまで働くのは幸せですか?
そこでいま政府が勧めているのが、「死ぬまで働き続ける」という選択肢です。もちろん、これは一番実現可能性のある生き方ですし、私自身も働き続けること自体に反対はしません。
ただ、働いて収入が増えると、税金や社会保険料の負担が増えるだけでなく、住民税非課税世帯が受けているさまざまな恩恵を失うことになります。さらに、働き続けることには重要な前提条件があります。それは楽しい仕事をすることです。
現役世代のときは、家族を守るために大きなストレスを抱えながらも、歯を食いしばって働いてきた人がほとんどでしょう。その責務から解放された老後でも、再びつらい仕事で長時間働くという人生が本当に幸せでしょうか。
「田舎暮らし」はお勧めできない
私が一番お勧めしていることは、年金給付が減っていくのであれば、それに応じて生活コストを下げる家計の構造改革を断行することです。しかし、生活コストを半減させることなどできるのでしょうか。私は、大都市に居住する人は、容易に実現可能だと思います。大都市を捨てればよいのです。
大都市は、家賃や駐車場代が高いだけでなく、あらゆる消費財が割高になっています。だから郊外や田舎に引っ越せば、生活費が劇的に下がるのです。田舎に行けば、住宅は限りなくタダに近い価格で手に入ります。
ただ、若い人は別にして、私は50代の皆さんには、田舎暮らしをお勧めしていません。田舎は人間関係が濃くて、そこに溶け込むことが中高年からだと難しいからです。田舎には生業のほかに、道路整備とか消防団とか村祭りの準備とか、お金にならない仕事がたくさんあります。コミュニティの一員として、まだ受け入れられていないなかで、そうした仕事をするのは、中高年にとってはとてもつらいことなのです。
だから私は「トカイナカ暮らし」をお勧めしています。トカイナカというのは、都心と田舎の中間のことで、イメージ的には、東京圏だと都心から50キロ圏くらい、大阪圏だと30キロ圏くらいになります。そこでは田舎ほどの濃密な人間関係はありません。町の仕事も、回覧板を回したり、ごみ集積場の掃除の当番をしたりと、ごくわずかです。