追い詰められたプーチンがとる手段は

ロシアはデフォルトに陥ったと主要投資家らに認定され、ヒト、モノ、カネの海外流出は加速するだろう。GDP成長率の低下は避けられない。ロシア国民の不満は高まり、2024年に大統領選挙を控えるプーチン大統領は追い詰められるだろう。なお、2020年の名目GDPでロシアは世界11位(GDP規模は約1.5兆ドル(185兆円))だ。デフォルトが世界の金融市場を混乱させる可能性は低い。

それよりも懸念されるのが、ロシアがさらに強硬な手段に打って出る展開だ。経済面にフォーカスすると、4月6日時点でノルドストリーム1によってロシアは西側諸国と脆いながらも経済的な関係を保っている。天然ガスの4割をロシアからの輸入に頼ってきたEUは、今すぐロシア産の天然ガスや原油の供給が断たれることは避けなければならない。

ロシアにとってもノルドストリーム1は米ドルなどを確保するために必要だ。しかし、追い詰められたプーチン大統領が報復のために天然ガスの輸出を減らすなどすれば、欧州をはじめ世界経済には大きな負の影響がおよぶ。

石油パイプライン工業地区
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“ロシア依存”のドイツが方針転換する意味

キーウ近郊などで多数の民間人の殺害疑惑が浮上した後、西側諸国は、真剣にロシアへのエネルギー依存を断たなければならないと危機感を強めはじめた。特に、ドイツの対ロ姿勢は一段と硬化しはじめたように見える。ランブレヒト独国防相はEUがロシア産ガスの輸入禁止を議論すべきと指摘した。

それはドイツのエネルギーや安全保障政策の転換といえる。その考えに傾斜するEU加盟国は増えるだろう。ロシアとウクライナの停戦交渉の内容、今なお激しい戦闘が続いていることなどを念頭におくと、ウクライナ危機が短期間で落ち着く展開は考えづらい。

ウクライナ情勢は深刻化し、欧州各国をはじめ西側諸国はロシアへの制裁を強めるために石炭、原油、天然ガスの禁輸など踏み込んだ措置を検討、導入しなければならなくなるだろう。6日に米国が発表した追加制裁に加えて、ガスプロムバンクなどが行うエネルギー関連の取引が金融制裁の対象に含まれる展開は排除できない。