ネット右翼を嘲笑する「おバカな日本」というアカウント
「日本傻事」(おバカな日本)という微博(中国のSNS)アカウントをご存じだろうか。これは日本語ができる「愛国的」な中国人が運営しているアカウントで、フォロワー数は22万1000人。内容は中国にとって好ましくない日本国内の言説(台湾との連帯の主張など)や、日本のB級ニュースなどを批判的な姿勢で紹介するものだ。
この「日本傻事」や、類似の「日本tui一生」(フォロワー1万7000人)などのアカウントが興味深いのは、日本語のツイッター、ヤフーニュースやYouTubeのコメント欄などで見られるネット右翼系の「おバカ」な投稿を積極的に翻訳し、嘲笑のネタにしていることだろう。
ツイッターや「ヤフコメ」は、ヒマ人が匿名でめちゃくちゃなことを投稿して憂さ晴らしができる便所の落書き……であるかに思えて、実はそうした低劣な書き込みが22万1000人の中国人から「おバカ」として笑いものにされている場合がある。これが2022年のインターネット空間なのだ。
「ウクライナ女性を美人限定で保護します」
もっとも、国内の閉じたネット空間で横行する恥ずかしい言動を海外に晒されて大恥をかく現象は、実は中国も同様だ。
ロシアによるウクライナ侵攻の勃発前夜である2月22日ごろから、中国国内のSNSの「戦争になればウクライナの美女がたくさん中国に来るぞ」「18歳から30歳までの美人限定で保護します」といった差別的な内容の投稿文が英語に翻訳され、スクリーンショット画像の証拠付きで世界中のネット空間にばらまかれたのだ。
この情報は中国の国内外でかなり広がり、物議をかもした。結果、中国のネット上では2月25~26日ごろから類似の投稿が多数削除され、中国国内のメディアが盛んに批判記事を掲載しはじめた──。つまり、当局からお叱りの姿勢が示された。
当時、中国はロシアの全面侵攻を予測しておらず、在ウクライナ中国人の保護方針は混乱していた。たとえば、最初は「退避の時は車両に中国国旗を掲げるように」と呼びかけられていたのが、数日後に「中国人だと身元を明かさないように」と真逆のメッセージが出されている。
一連の迷走は、中国の予想以上にウクライナ国内での対中感情が悪化したことが理由だった。中国国内で「ウクライナ美女」の投稿文を強く批判する報道が続出したのも、同国内の対中感情がこれ以上高まるのが懸念されたためかと思える。