政府の「まん延防止等重点措置」は本当に効果のある施策だったのだろうか。大阪大学の北村周平特任准教授は「経済学の手法で分析した結果、明らかな効果が確認できたのは2021年春の初期だけだった。日本で費用対効果のある政策を実現するには、2つの問題がある」という――。
まん延防止等重点措置が始まり、店頭に掲げられた午後7時までの酒類提供を知らせる張り紙=2021年6月21日、東京都港区
写真=時事通信フォト
まん延防止等重点措置が始まり、店頭に掲げられた午後7時までの酒類提供を知らせる張り紙=2021年6月21日、東京都港区

まん防は「効果が強力」な政策らしいが…

先日、日本政府は、年始から多くの都道府県で行われてきたまん延防止等重点措置(以下、「まん防」)の解除を決定しました。

このまん防ですが、期待した効果を上げていたのでしょうか。この記事を読まれている読者の中にも、同じような疑問をもたれた方がいらっしゃるかもしれません。例えば、分科会資料(※1)を読むと、「まん延防止等重点措置」は「効果が強力だが社会経済への負荷が大きい」政策として書かれており、効果が強力な政策という位置づけであることが伺えます。しかし、少なくともこの分科会資料の中に、それを裏付けるものは示されていないように見えます。

このことは、まん防などの感染症対策に限った話ではありません。政府は日々さまざまな政策を実施していますが、それらはどれぐらい効果的なのでしょうか。例えば、私たちは納税者として税金を支払いますが、その税金はきちんと効果的な使われ方をしているのでしょうか。この話は、民主主義の話とも密接に関連していると思います。

(※1)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/bunkakai/dai14/gijisidai.pdf

日常生活に影響を受けた国民の知る権利

日本は代議制民主主義ですので、税金の使い道は政治家や官僚に任せておけばいい、というご意見があると思います。他方で、やはり自分たちが支払う税金ですので、その使い方は気になります。もちろん税金の話だけに限りません。まん防のように日常生活に影響を及ぼすような政策があったとき、その効果がどれぐらいなのかについて知るぐらいの権利はあると思います。

しかし、通常、政策のことをニュースで聞くことはあっても、その政策の効果がどれぐらいだったのかについては、根拠があやしい試算・概算の類を除き、私たちが知ることはほとんどありません。

このように、「ある政策にはどれぐらいの効果があるか」ということを調べる作業は、よく「政策評価」と呼ばれます。よくニュースで「この政策には○兆円の効果が見込める」といった数字を見かけることがありますが、そういった実施前に出される試算や、あるいは実施後に計算される概算値のことではなく、さまざまなデータを使って、きちんと政策の効果の大きさを計測することを指します。