さらに、香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙によると、女性の夫の婚姻証明とされる写真がネットで出回っている。相手女性の写真は今回の女性とは異なる謎の人物になっており、拘束されていた女性と結婚していたとの説明と矛盾する。

真相を突き止めるため、現地の女性活動家2名が現場の村へと車を走らせた。しかし、予約していた宿泊施設の予約を捜査当局に取り消されるなどの妨害に遭っている。諦めない2人は地元市民へのインタビューなどをSNSに投稿したが、これもすぐに検閲を受け削除された。

1月30日になると、地元当局は声明の内容を変更した。路上生活者だった女性に、現夫の父親が情けをかけ、善意で養子にしたのだという。その後、夫と合法的に結婚したとの説明だ。この夫は慈善活動への取り組みのアピールに熱心で、SNSには8人の子を育てながら児童ボランティアにも精を出す動画を投稿している。

だが、人々の反応は冷ややかだ。精神疾患を抱えた妻に一人っ子政策中に8人を産ませたことから、この夫が避妊をせずレイプ同然の扱いをしていたとの観測が強まった。

偽名で発表していたことを自治体が認める

2月上旬になって自治体側は、楊という姓が偽名であったことを認め、本名は「小花梅」であると発表した。

こんどの説明はこうだ。女性は遠く離れた雲南省で生まれたが、両親がとある村人に彼女を託した。村人ははるばる江蘇省まで女性を連れてきて、難病の治療を受けさせる予定だったという。しかし、道中ではぐれたとのことだ。

だが、なぜ3000キロ近くも離れた江蘇省で治療する必要があったのか? 自治体の発表を信じる者はもういなかった。

米ラジオ局の『WXXI』は指摘する。「(小花梅という)この名前は、ミャンマー国境に近い南西部雲南省の小さな集落・ヤグ村で失踪届が出されている女性の名前と一致する。なぜか彼女は、故郷から1800マイル(約2900キロ)も離れたところで拘束され、寒さに震えているのだ」

人々の冷めやらぬ怒りに屈する形で、当局は2月10日、人身売買ではないとの見解を撤回した。55歳の夫を監禁の罪で逮捕・起訴し、さらに女性の実の両親またはブローカーとみられる夫婦1組を人身売買の疑いで逮捕するに至った。

詳細な調査を行うとして2月18日までにタスクフォースが発足したが、実効性は不透明だ。米公共放送の『NPR』によると現在、現場となった村は警備員が封鎖している。

人身売買は、1997年まで適法だった

今回の騒動を受け、中国で軽視される女性の権利について議論が高まっている。児童婚や人身売買などの犯罪行為について、刑罰があまりにも軽いとの指摘が生じている。

児童婚は1950年に禁止されたものの、その後も水面下で活発に行われている。人身売買に至っては、1997年まで適法であった。現在でも、虐待あるいは帰省の妨害をしない限り、買った側は合法的に減刑措置を受けることができる。