イギリスで3位のバージン・コーラが破綻した理由は

イギリスの経済規模が非常に大きいと言えるかどうかお答えしておきましょう。世界のGDPに占めるシェアで言えば、アメリカは正真正銘巨大であり、全世界で使われる4ドルのうち1ドルはアメリカを経由します。6ドルのうち1ドルは中国です。

他方、イギリスは世界経済の3パーセントちょっとを占めるにすぎません。比較の意味で、リチャード・ブランソン卿が1990年代初頭に立ち上げたバージン・コーラ(コークやペプシのライバルになろうとして、パメラ・アンダーソン[1967年生まれのカナダ出身のモデル、女優]をかたどった瓶に入っていた)を見てみましょう。

バージン・コーラは、コーラ飲料のイギリス国内マーケットで何とか約3パーセントを獲得したものの、数年後に生産を中止しました(※6)

バージン・コーラはイギリスで3番目に大きいコーラ飲料会社だったかもしれませんが、それでもさほど大きいわけではなかったのです。同様に、イギリスの経済規模は世界で5番目に大きかったかもしれませんが、それでもさほど大きいわけではありません。

しかし、まだ多くの情報を見落としています。ちょっと考えてみましょう。明日、誰かが何か(レモン2個とファンタの空き缶で作った常温核融合エネルギー生成装置にしましょう)を発明して、一夜のうちに、世界のすべての国の経済が10倍に成長するとします。

経済成長の背景
写真=iStock.com/bluebay2014
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GDPランキングが高いほど国民は幸福か

先ほどの表を見てみましょう。イギリスはまだ6番目でインドの後塵を拝しています。ただ、GDPの数値の最後にゼロが1つ増えました。

重要なのは相対的な豊かさだというのは本当です。私たちは少なくとも部分的には、絶対値ではなく他人と比べてどのくらい豊かであるかによって幸福感を得るというエビデンスがあります(※7)

私たちのファンタ缶常温核融合の発明は、世界に革命を起こし、何億もの人々を貧困から救うことでしょう。しかしそれでも、ランキングに限ってみれば何も変わりません。フランスは依然として7位あたりをうろうろしており、無駄なストライキをやりたがる怠け者です。

(国のGDPは国民全員の総和なので、GDPの大きさは個人にとってはさほど意味はないということも知っておくべきです。リヒテンシュタインは人口が少ないためGDPは常に小さいのですが、国民のほとんどはかなり裕福です。逆に、インドネシアは人口が多いためGDPはとても大きいのですが、国民の多くはかなり貧乏です。そう考えると1人当たりGDPのほうが興味ありますよね。IMFの1人当たりGDPのリストによると、イギリスはかなり順位が下がって21位です)(※8)

ランキングと併せてデータも確認すべき

ランキングに全く価値がないわけではありません。ランキングは、あなたが同僚に比べてどのくらいよくやっているかについて何かを教えてくれます。“あなた”が営業マンでも、レスターシャー州の学校であっても、あるいは中規模の西欧民主国家であっても。

たとえば、イギリスはCOVID-19のスワブテスト[綿棒で鼻咽頭ぬぐい液を取る検査]の数でドイツに後れを取っているか、あるいは、芸術や防衛にかける予算規模が他の国と比べてどの程度かを知るには有用でしょう。

しかしそうであっても、そのランキングがどんなデータに基づいているかを併せて知らなければ、有用とは言えません。スワブテストでドイツに後れを取っているとしても、ドイツは人口10万人当たり500回、一方イギリスは499回であれば、たぶん気にはなりません。500回対50回なら、何かがどこかで間違ったのかもしれませんが。

とはいえ私たちは今日、大学ランキング、学校ランキング、病院ランキングなど、あらゆるものの順位を数えたがります。カレー屋さんのランキングもあればケバブの賞まであります。