他人に見せびらかすような金の使い方は下品

渡辺由佳里『アメリカはいつも夢見ている』(ベストセラーズ)
渡辺由佳里『アメリカはいつも夢見ている』(ベストセラーズ)

何年かこの地に住んで知ったのは、アメリカ東海岸のオールドマネーにとって「質素倹約は美徳」ということだ。ナンタケット島にいるときに車がエンストして立ち往生しているRさん夫婦に出くわしたのだが、彼らが20年以上同じボルボを運転しているのを知って「さすがだ」と思った。

オールドマネーの間では富を他人に見せびらかすような使い方は「下品」だとみなされており、車は動かなくなるまで使うし、服や靴も上質のものを長い間使い続ける。「ここでは、穴があいたセーターを着ている者ほど大金持ちの可能性がある」と教えてもらったことがある。外見や生活態度からオールドマネーを見分けることは難しいのだ。

2004年に民主党大統領予備選に立候補したハワード・ディーンの家族もオールドマネーだ。彼と伴侶は両方とも医師である。ディーンの選挙参謀だった知人が「ハワードは倹約家すぎて困ったよ」と笑い話をしてくれた。

包装紙やリボンの再活用は「東海岸らしい」こと

キャンペーンのときに着ていたスーツはすべて「洗濯機で丸洗いできる」のが売り物のポリエステルで、しかも大統領選挙のキャンペーン中はそれを自分で洗濯していたというのだ。「大統領になるつもりなら、スーツくらいは良い物を着なくてはいけない」と知人が提言したところ、「重要ではないことに金を浪費したくない」とディーンに反論されたという。

私が生まれ育った時代の日本は、今とは異なり、物があまりなかった時代だ。絵を描く白い紙を手に入れるのも困難だったので、片面しか印刷されていないチラシは貴重だった。その時代の習慣が染みついている私は、クリスマスプレゼントの包装紙やリボンを捨てることができずについ再使用を試みてしまう。

貧乏くさい癖なのだが、義母は「東海岸らしい質素倹約ね」と誤解してくれている。この点で、オールドマネーに感謝したい私である。

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