この変化はもう元に戻ることはない

3月24日にネット専業の住信SBIネット銀行(以下、住信SBI)が東京証券取引所の第1部に上場する予定だ。住信SBIは上場によって獲得した資金を“BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)”事業の強化に用いる。重要なのは、BaaSがこれまでの銀行の業態や姿を変える可能性が高いことだ。

これまで、多くの銀行が駅前の一等地などに店舗を構え、預金をはじめとする多種多様な金融サービスを提供してきた。それに対して、BaaSでは銀行の機能がスマホのアプリにあらかじめ埋め込まれる。BaaSによって、これから銀行の概念は大きく変化することだろう。おそらく、その変化はもう元に戻ることはない。BaaSがわが国銀行業界に与えるインパクトはとてつもなく大きい。

今後、世界的に銀行の存在意義が急速に縮小するだろう。世界全体でBaaSをはじめ金融ビジネスのデジタル化は加速する可能性が高い。国内各行がどのようにして生き残りを目指すか、経営陣の覚悟が問われる。

銀行本社ビル
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支店網やATMが不要…BaaSとは何か

住信SBIはデジタル(ネット)バンク事業とBaaS事業を運営している。BaaSとは預金や決済、貸し出し、クレジットカードなどの金融サービスを提供するプラットフォームのことをいう。BaaS企業と提携する企業は、課題解決のために必要な金融サービスを利用し、自社のサービスと組み合わせて最終顧客に提供する。BaaS運営企業と提携先の企業はオープンな“アプリケーション・プログラミング・インターフェイス(Application Programming Interface、API)”によってつながる。

オープンAPIとは、アプリの機能やデータを、別のアプリから呼び出して利用するシステムを指す。提携先の企業はオープンAPIを経由して必要な銀行サービスをBaaS企業から継続的に購入する。BaaSによって支店網やATMがなくても銀行サービスの提供が可能になる。BaaSの仕組みは、“B2B2C(企業と消費者の間にもう一つ別の企業が入ってサービスなどを仲介する形態)”と表されることもある。