豊富な品揃えで幅広い顧客に対応できる

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この背景には、「アソートメントの妙」があります。アソートメントとは、簡単に言えば品揃えのことです。

同社は、過去の教訓から学んだのでしょう。ハンバーガー100円、プレミアムローストコーヒー120円(おかわり自由。キャンペーンで無料配布)など低価格戦略を立てる一方、通常の2.5倍の肉を使った「クォーターパウンダー」や単品400~420円の「テキサスバーガー」など高付加価値のバーガーを期間限定で出しました。これによって、全体の客単価を下落させず、高い収益を確保する原動力になったのです。

単純に値下げをするのではなく、低価格帯と高価格帯を組み合わせ、品揃えをバラエティー豊かにする。そんな巧みなアソートメントこそが、デフレに対応する策のひとつだといえるでしょう。

アソートメントを拡大することによって、開発・生産コストは高くなりますが、消費者からすれば様々なタイプやサイズのアイテムが揃っていることは大きな魅力となります。価格帯の違う豊富な品揃えを持つことで、幅広い顧客に対応できるだけでなく、「今日はちょっといつもと違うものを」と客を高価格の商品へと誘導できる装置としても優れています。

マクドナルドは09年冬、今度はハンバーガーでなく、コーヒーの新ラインナップとして、「キャラメルラテ」「カフェモカ」「カプチーノ」やそのアイス版など、7品目を投入しました。スターバックスやタリーズなどの大手コーヒーチェーン店の同種商品に比べかなり割安な価格を設定しています。

もちろん、経営には「選択と集中」が重要で、過度にメニューを増やしすぎては生産性やクオリティーを落としてしまいます。しかし、客のニーズに合わせてバランスのいいアソートメントを進めることで、集客力や収益力、さらには企業イメージを高めるという相乗効果を生むのです。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=大塚常好)