「死」という未知の体験には、さまざまな不安がつきまとう。独園寺の住職・藤尾聡允さんによると、釈迦の死を描いた涅槃図(ねはんず)に恐怖を和らげるヒントがあるという。「プレジデント」(2022年3月18日号)の特集「ひとりで生きる『老後戦略』」より、記事の一部をお届けします──。
人間が持っている、死のシステム
「天寿をまっとうする」という言葉があります。人間の命は、開いた傘を閉じるように、静かにたたまれていきます。あるお医者様のお話によると、人間の体には徐々に死を迎え入れるシステムが備わっているそうです。特に老衰の場合、亡くなる1週間、あるいは10日ぐらい前から、体のあらゆる臓器や細胞は死ぬ準備を始めます。スイッチを一つ一つオフにするように感覚が薄れていき、静かに命が閉じられていく。たとえば、1週間くらい前から食が細くなっていき、3日前くらいから何も食べず水を飲むぐらいになり、死ぬときは胃の中はほぼ空っぽになっている。人間にはそんな死のシステムがあると聞きます。
生死の境目に、痛みや辛さはありません。たとえば認知症患者は、様々な感情を細分化することなく、単純な「快/不快」という指針を大切にして、今という時間に集中するようになります。死への恐怖はなく、楽しかった思い出の中だけで生きるようになるのです。
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