「不利益」の責任は誰もとってくれない
答弁書をはじめとした政府の認識によれば、「みなし陽性」は医療現場の負担軽減、外来逼迫の改善効果が期待できるとされている。だが、実際の現場での運用を少し考えるだけでも、患者さんのためにならないだけでなく、医療機関にとっても、かえって混乱や戸惑い、トラブルのタネ、負担を増やす愚策であることは明らかだ。“現場をわかっていない者たちが政策を決めるとトラブルの元になる”の典型とも言えるだろう。
そもそも今回の「みなし陽性」は、季節性インフルエンザに対してわれわれが従来行ってきた医学的知識と経験に裏打ちされたまっとうな診断法ではない。ただ検査体制を整備してこなかった不作為を糊塗するために付け焼き刃的に出てきたものにすぎないのだ。現に岸田政権は、この「みなし診断」が引き起こすトラブルや混乱、国民が被る不利益をなんら想定していなかったことを、くしくも自分たちが閣議決定した答弁書によって明言してしまった。
岸田政権にはこの危険な愚策の一刻も早い撤回を求める。また現場の医師もこの「みなし陽性診断」を行うことついては十分に注意されたい。「良かれ」と思って安易に診断してしまうと思わぬトラブルに巻き込まれてしまうだろう。そして何より患者の皆さんは、安易にこの診断を受け入れるべきではない。もしあなたに「不利益」が発生しても、国は何ら救済するつもりはないのだから。