ネットの知り合いは、困ったときの助けにならない
【野田】しかし、19年度の調査(対象は13~29歳)で、他者とのかかわり方について尋ねているのですが、「困ったときは助けてくれる」相手として「インターネット上における人やコミュニティ」を挙げた人は少なく、23.3%にとどまっています。
また、電通未来予測支援ラボが15~29歳の男女を対象に実施した「令和 若者が望む未来調査2019」によると、友人の数は「1~10人」と答えた人が約5割を占めていましたが、全体の半数近くの人は「SNSで知り合った友人の数」を「0人」と答えています。
では、若者はネットの人間関係において何を期待しているのかというと、同調査では「暇つぶしになる」「時間帯を気にしない」「気軽だ」といった項目を挙げる人が多くいました。
これに対し、リアルの人間関係で期待していることについては、「思い出に残る」「気持ちが伝わる」「約束を守ろうと思う」などの項目を挙げる人が多くいました。
「つき合いたい相手とだけつき合う」の大きな弊害
【野田】このように見ていくと、少なくとも現代の若者たちはネットコミュニティを自分の居場所と感じつつも、友人と出会ったり友人と深くかかわったりするホームベースの代替物とはとらえていないということがわかります。
しかし、その一方で、ネットサービスはどんどん拡大していき、利用者は増加の一途をたどっています。これを僕らは「3段階めの郊外化(第3の郊外化)」と位置づけています。
日本社会は2段階の郊外化をへて、大きな変容を遂げてきました。1段階めは団地化で、地域の空洞化が進みました。2段階めはコンビニ化で、家族の空洞化が進みました。現在起きている3段階めの郊外化は「インターネット化」であり、その結果、進行しているのが人間関係の空洞化です。
【宮台】野田さんによる導入を踏まえて、3段階めの郊外化について掘り下げましょう。
ネットコミュニティにおける人間関係は、つき合いたい相手とだけつき合う、つき合いたいときにだけつき合う、相手の見たいところだけを見る、というつまみ食いです。すると、部分的な人間関係しか経験できず、包括的な人間関係から疎外されます。
その結果、「相手が困っていたら、思わず自分が動いてしまう」ような損得を超えた利他的つながりを経験できなくなります。実際、そうしたつながりを経験したことがないという大学生が大半です。