オアシス都市で食べられている「世界最高の絶品長寿食」

アルタイと対照的だったのがトルファンやホータン。どちらも砂漠の中のオアシス都市です。ここの人たちはオアシスの豊富な水を利用して野菜や果物を栽培していました。

私たちが訪れたときは、ウリやスイカ、アンズ、ブドウなど多種多様の野菜や果物が市場に並んでいます。さまざまな野菜料理が食卓に並ぶ中、特に野菜と羊の肉を炊き合わせた「ボロー」という炊き込みご飯は実にすばらしいものでした。

伝統的な中央アジアのピラフ
写真=iStock.com/satura86
※写真はイメージです

炭水化物、たんぱく質、食物繊維、カロテンなどの抗酸化栄養素がこの1品でいっぺんに取れるのです。しかも、これがまたひじょうにおいしい。世界最高と呼びたいほどの絶品長寿食でした。

さらにボローと一緒に食べる羊料理「シシカバブ」がまたいいのです。肉の脂を落とす焼き方をしており、味付けはカレー味の香辛料。これだと塩は少なくてすみます。

またここの人たちもお茶をよく飲みますが、塩やバターは入れません。「酢乳」と呼ばれるヨーグルトもよく飲まれていました。はたしてここの人たちの健診結果はというと、予想をはるかに上回るほどのすばらしいものでした。

50代の前半で高血圧、高脂血症、肥満は当時の日本より確実に少ないのです。衛生状態さえ良ければ日本をしのぐ長寿地域になっていたはずです。実際に100歳以上の高齢者が元気はつらつと暮らしているのが印象的でした。

アルタイの人々の食生活のポイント
・主食の羊肉を脂身もそのまま大量に摂取
・野菜や果物をほとんど摂らない
・塩入りのバター茶を大量に飲む
トルファン、ホータンの人々の食生活のポイント
・野菜や果物を豊富に摂取している
・脂を落とす調理法で肉を食べている
・ヨーグルト、塩やバターの入らないお茶を飲んでいる

中国南西部の長寿地域で主食になっている大豆

中国の南西部に位置する貴州省の首都・貴陽。昔からここは、長寿地域として知られているところです。脳卒中や心臓死が少ないばかりでなく、がんの発生率も少ないといわれていました。心臓死とは心筋梗塞など心臓病による死亡のことです。

しかし私たちが調査を開始したときは、データも統計もなく、その理由はわかっていませんでした。中国の研究者から「長生きの人が多い理由をぜひ調べてほしい」と頼まれて調査に出かけることになりました。

この地域はほぼ全体が高原地帯です。飛行機で降り立った瞬間、「主食は米ではないだろうな」と思いました。というのも土地がカルスト台地で、山肌には石灰岩の白い地層がいたるところに見られたのです。これでは稲作や畑作には向きません。

予想通り、現地の人が主食として食べていたのが大豆やとうもろこしでした。特に大豆は豆腐、厚揚げ、納豆、乾燥させた保存食、チーズのようなものまで、ありとあらゆる種類の加工品があるのです。

またすばらしいのは山菜の活用でした。野生のシソの葉を裏庭から取って来て煮込んで食べるのです。シソは抗酸化力が高い植物ですから、動脈硬化を防ぎます。

地質の関係で、畑のない分、こうして自生している山菜で野菜の栄養分を補っているのです。