「これを選べばうまくいく」絶対の正解はない

私がクリニックでやっていることは、最初から最後まで患者さんのり固まった“価値観念をはずす”ということにつきます。

あれでもよい、これでもよい、こういう方法もある……とたくさんの選択肢を柔軟に検討できる。その中から自分で「これがよい」と思ったものを選択し、選択した結果を他人のせいにしない。これは大人の条件です。何もかも100%うまくいく正解などはありませんから、うまくいかなかった部分は再検討すればよい。

ところが、直線的因果いんが論で“これを選べばうまくいく”という正解があると思っている人は意外に多いようです。その正解を選べずに道を踏みはずしてしまったのは、親の育て方のせい。無駄にしてしまった時間を取り戻すために、どこかで近道してうまくいく方法を探しているのが「毒親期」なのでしょう。できれば、うまく点数を稼げなくなったゲーム(人生)はリセットして、子ども時代に戻ってやり直したい。

理解できないビジネスマン見つめるの落書きの壁
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凝り固まりがちな人はもっといい加減になろう

しかし、人生をリセットすることなどできませんから、そこから変化させていくほかありません。どこかに新しい句読点を打って、変化させてみる。そのためには頭を柔軟にほぐしたほうが楽なのですが、いくらほぐしても、もともと固まりたい人は何かの主義主張にすぐ凝り固まってしまいます。

主義主張(イズム)に凝り固まると、ほかの選択肢が見えなくなるし、自分が信じていること以外の選択肢を選んだ人を攻撃したくなります。もっといい加減になって、もう少し幅広く受容し、柔軟に人生に対処してほしいのです。

例えば、「お母さんの希望する大学を順調に卒業して、お母さんの願っているような会社員になろうとしなくてもいいんだよ。ほかにもいろんな生き方があるでしょ」と言うのは、「お母さんが言った通りにしてはダメだ」と言っているわけではありません。

「お母さんの望みに対して正反対の人生を生きよう」というのではなく、「お母さんの望んだ人生を選んでもいいし、ほかの生き方に目を移して選んでもいい。自分で選びとってね」というメッセージです。決めるのは本人ですが、“ほかの選択肢もありかもね”と考えられるようになってほしい。“この行動を選びなさい”という提案ではなく、あくまで“観念をゆるめましょう”です。