コロナ禍に加え、煩雑な人間関係……ストレス過多でイライラを募らせ、周りに当たってしまう人は多い。明治大学教授の堀田秀吾さんと医師の木島豪さんは、科学的な調査を踏まえ「物や人に当たると怒りはかえって増幅し、体にも悪い。それを回避するためにはセルフコントロールする術を身に付けるといい」という――。

※本稿は、堀田秀吾・木島豪『科学的に自分を思い通りに動かす セルフコントロール大全』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

不満な表情を見せる若い女性
写真=iStock.com/SetsukoN
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「イライラして周りに当たってしまう」を科学的に回避する方法

カッと怒りの感情を覚えても、自分のなかに留めていられればいいのですが、周囲の物や人にぶつけてしまったことはありませんか? 頭ではダメだとわかっていても、ついついやってしまうこともありますよね……。こんなときこそ、セルフコントロールでどうにかしたいものです。

考察1:物や人に当たると怒りは増幅する

科学的な事実として抑えておきたいのは、イライラして物や人に当たるのは、メリットがないということです。物や人に当たることで怒りを発散したいという気持ちがあるかもしれませんが、残念ながらそのような効果はありません。ストレス解消効果があるどころか、マイナスの影響しかないのです。

<怒りを物や人にぶつけることの研究>
オハイオ州立大学のブッシュマンらの研究では、被験者たちに「怒りは人にぶつけるよりも、枕やパンチング・バッグのような物にぶつけると発散できる」という嘘の情報を与えました。そして、被験者が書いたエッセイをわざと第3者に酷評させて被験者をイライラさせたあと、リストのなかから行動したいことを選ばせました。

すると、ほとんどの人がパンチング・バッグを選びました。怒りを発散させるためにパンチング・バッグを殴った被験者たちは、怒りがおさまるどころか、攻撃的になって怒りが続く傾向がありました。しかも、怒りが増すだけではなく、関係のない人に怒りをぶつける被験者まででるという結果になったのです。

要するに、物や人に当たるとストレスが発散できるどころか、怒りが増幅し、周囲に八つ当たりして、より大きな迷惑がかかる可能性が高まるのです。

物に当たることで怒りが増幅し、人に当たらずにはいられなくなる。そこでまた怒りが大きくなり……という地獄の無限ループに陥ってしまうかもしれません。

考察2:怒りは体に悪い

怒りは、自己防衛の手段として怒ることが大切な場合もありますが、基本的に怒りは体に悪いものです。ストレスや不安に直結しやすい高血圧や血行不良、頭痛などの症状を引き起こすとされる科学的なデータがたくさんあります。そのなかでも面白い研究を紹介します。

<免疫力と怒りの研究>
ロンドン大学のレインらは、怒ると6時間以上免疫力が下がるという研究結果を示しています。さらに、その研究では、他者へのいたわり、慈しみといった感情を抱くと、24時間以上免疫力が高まるとのこと。人に優しくするとプラス効果があるのに対し、怒るとマイナス効果になるというわけです。

このように、怒りは心だけでなく体にも悪影響があります。なるべくポジティブな気持ちで日々を過ごしたいものです。