痛手を受けた投資家たちは再び戻ってくるか
その年の資本市場全体をみると、社債の発行額が当時過去最高の13兆円近くに達し、前年比で約2倍に拡大したが、BBB格企業の社債はわずか200億円足らずにすぎなかった。そのうえ生損保などの大手機関投資家はA-格の企業に対しても「格下げされてしまえば、即BBBゾーンになってしまう危険水域」として、A-企業の社債まで購入を見合わせた。大手機関投資家は多くが内規で「A-以上の債券でなければ購入できない」と定めているにもかかわらず、である。
現在、よく似た状況になっているのが中国の資本市場で、信用力の高い企業までも資金調達に窮するケースが目立つようになった。昨年秋にかけて当局の指導で社債発行が上向いたとの報道もあるが、民間企業だけではなく、国営企業でさえ経営難に瀕する事例が増え、企業金融への資金の出し手であった投資家が痛手を受けているのだから、彼らがどれだけ戻ってくるのかは疑問だ。
倒産の波は半導体関連や鉱山経営にも
日本の98年当時に重ね合わせられる事例はこれだけではない。
不良債権問題の処理にてこずった日本では景気低迷が体質化し、不良債権を抱えていなかった製造業まで倒産の波にさらわれた。日本の主力産業である電機や機械、輸送用機器にまで倒産したり、倒産寸前にまで追い込まれる企業が相次いだのである。一方の中国も、不動産会社だけでなく、半導体関連や鉱山経営の会社にまで倒産の裾野が広がっている。
金融にも影響が及びつつあるのか、日本経済新聞は1月20日付の朝刊で「中国の商業銀行などが2021年9月末、海外からの債務を減らしていた」と報じ、「恒大の債務不履行リスクが高まったことで、中国の金融機関が短期マネーの調達に苦慮していた」との見方を紹介している。
不良債権問題の影響で中国の商業銀行がドル資金の調達難に瀕するようだと、やはり98年ごろに邦銀がドル資金を調達する際に上乗せ金利を求められた「ジャパン・プレミアム」に似た「チャイナ・プレミアム」が生じる可能性も出てくるだろう。
個別の金融機関の信用力にも影を落としている。社債のデフォルトが問題になっている恒大集団への融資が大きく、株価が低迷している中国民生銀行はさしずめ、不動産関連融資が大きかった日本長期信用銀行(現新生銀行)や日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)といったところか。それとも97年に倒産したゼネコン東海興業への融資が大きく、経営破綻の要因のひとつになった北海道拓殖銀行になぞらえられるだろうか。