スマートグラスより視界を遮るVRヘッドセットが最適

メタバースにアクセスする手段は、別にVRである必要はありません。今までのインターネットへのアクセス同様、スマートフォンやPCを使ってもよいと思います。

しかし、メタバースはその性質上、リアルで飽き足らなくなった人たちが主たる利用者になる空間と考えられます。フィルターバブルによって形成された、自分の居心地のために最適化された空間です。

それを実現するためには、VR技術を使うのが手っ取り早いでしょう。その世界により没入し、手触りや香りも含めて体験の質を高める装置です。ですから、VR技術はメタバースを構成する必須要素ではありませんが、重要なピースであり続けるでしょう。

寝そべって仮想空間を楽しんでいる人たち
写真=iStock.com/Dan Rentea
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ミラーワールドがスマートグラスを使うのに対して、メタバースではVRヘッドセットが重要な役割を果たすのが対照的です。でも、発想の本質を考慮すれば、それが必然であることがわかります。

ミラーワールドはリアルと関わるのが原義ですから、そのための装置はリアルが見えるものでなくてはなりません。だから、スマートグラスになります。

メタバースはリアルと切り離した完全な別世界を志向するので、むしろリアルの風景は見えないに越したことはありません。突き詰めれば視界を遮るVRヘッドセットが最適です(もちろんVRでも、必要に応じてシースルーやパススルーと呼ばれる機能を使って、リアルの様子を見ることは可能です)。

メタバースの潜在的利用者はきっと多い

VRヘッドセットがメタバースにアクセスするときのスタンダードな端末になるかどうかは、まだわかりません。スタンドアロンが主流になり、軽量化されたとはいえ、VRヘッドセットは大きく、重く、閉塞感があります。ゲームに人生をかけるようなプロのゲーマーでさえ、あれをかぶり続ければ疲れます。スマホと同等の生活必需品になるには、あと一段階のブレイクスルーが必要です。

重ねての記述になりますが、メタバースは「自分に優しい世界」「都合のよい世界」を提供するサービスです。そんなにそれを欲している人がいるのか? と疑問に思われる方は、きっとリアルで活躍されている方でしょう。

でも残念なことに、リアルでの生活に違和感や閉塞感を持ったり、リアルとは別の世界で活躍したいと考えている潜在的な利用者は多数に上ると考えられます。属性の同じ者をフィルターバブルの中に囲い込み、それによって生じるフリクション(摩擦)のない空間で「快」を提供するサービスであるSNSが隆盛を極めていることからも、それは説明できます。