不自然な統計の動きが意味するもの

トルコには政府によるインフレ統計の改ざん疑惑が付きまとうが、近頃は中銀の統計にも不自然な動きが散見されるようになってきた。

代表的なものに、外貨準備高がある。恒常的なリラ売り圧力に対して中銀がリラ買い介入をしていたことは公然の秘密であるが、そうであるにもかかわらず、中銀の外貨準備高は比較的潤沢な水準にある(図表3)。

トルコ中銀の外貨準備高(週次)

なぜ減らないのか。中銀が市中銀から外貨を借り入れるとともに、中国、カタール、韓国との通貨スワップ協定で補塡しているためだ。

つまりトルコは、減少した外貨準備を借金で賄っているのである。1月19日には長年敵対関係にあったアラブ首長国連邦(UAE)ともスワップ協定を結ぶなど、トルコはなりふり構わずに外貨をかき集めている。

ドルとリラの交換
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こうしたことから、トルコ中銀が保有する外貨準備は比較的潤沢な水準を維持している。とはいえ、結局のところトルコ中銀の外貨は内外からの借入によって膨らんでいるにすぎず、真の意味で潤沢という評価は成り立たない。返済までに通貨が下落していれば、為替差損を被るのは中銀であり、ひいては政府だ。最終的には、国民にそのツケが回る。

不自然な動きと言えば、トルコ中銀が昨年末の12月31日に1日で100億ドルの利益を計上した件も話題となっている。12月30日時点で年間損益を約700億リラの赤字としていたが、1日で600億リラの黒字に突如として転換したのである。その結果、中銀の株主である財務省は、利益の多くを配当として2月以降に受け取ることになる。

なぜ巨額の利益が一日にしてもたらされたのか、現地のエコノミストでさえ実態は不明なようだ。事実、中銀はこの利益の源泉について具体的な説明を拒んでいる。2月3日に中銀は緊急の総会を開く予定であり、その際に財務省が年末に生じた利益につき、何らかの説明を行うという観測もあるが、いずれにせよ不自然さが拭えない動きである。