不動産価格の値下がり局面で、政府ができることは「下落のスピードを一時的に緩和する」ことくらいしかできない。そしてこれからの人口減少と高齢化の急速な進行が、中国の不動産市場にとってマイナスに作用することはすでに各所で指摘されている通りである。

これに関しては、地方の都市化の余地がまだあるし、中国の1人あたりのGDPはまだ低いのでまだ成長の余地がある、という意見もあるが、人口減少+高齢化の急速な進行という要素は明確にネガティブである。実際、中国で地方財政の悪化が加速しており、東北部の黒竜江省にある旧産炭地、鶴崗市が事実上「財政破綻」したことも報道されている。

省直下の市としては初めてとみられるとのことで、地方財政の悪化の景気への悪影響も懸念されている。さらに過疎地の不動産価格は下落しており、鶴崗市では「5万元(約90万円)あれば家を買える」と言われ、「不動産価格が白菜の値段のように安い」とのことだ。

不動産バブルのツケは中国人が支払うことになる

恒大集団の問題とは、いったい何なのか。

それを端的に答えれば、中国政府がこれまで延々と続けてきた「GDP成長率の維持政策」と、地方政府の財源創出のための「不動産の人工バブル維持政策」が限界に達し始めた兆候である、ということになる。

要するに「貧富の格差をなくすための、習近平の政策に伴う短期的な調整」ではない。習近平国家主席が進めようとしている「共同富裕」と、不動産バブルの維持が矛盾しており、相いれないということが一番の問題なのである。

中国共産党の習近平総書記(国家主席)(中央)(中国・北京)
写真=AFP/時事通信フォト
中国共産党の習近平総書記(国家主席)(中央)(中国・北京)

さらに強大な権力者となった習近平の耳には、彼の逆鱗げきりんに触れることを恐れた部下たちから彼にとって不都合な情報が入らないのが現状だという話も聞かれる。

結局のところ、残されているのはこれまでの中国の奇跡の経済成長を、人口ボーナスとともに無理やり支えてきた不動産価格の高騰の落とし前をどうやって国民に付けさせるかという問題であるが、平和に決着することはできないだろう。

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