中華系レトルト食品の中でも人気の「麻婆豆腐」
この2年で在宅勤務が一般的となった。コロナ前に比べて自宅での食事が増え、近くのスーパーや小売店に行く機会が増えた人も多いだろう。中には、店頭に並ぶ冷凍食品やレトルト食品の多さに、あらためて驚いた人がいるかもしれない。
冷凍食品・レトルト食品なしでは、自宅での食生活が回らない時代だ。味も進化しておいしくなった。人気が高いのは「ぎょうざ・しゅうまい」や「チャーハン」など中華系だと聞くが、今回はその中でレトルト食品の「麻婆豆腐の素」を取り上げたい。
長年にわたり親しまれており、現在も多くの人が作ること。そして日本の食生活を変えた歴史もあるからだ。
現在はどのように利用されているのか。どんな経緯で発売され、日本の食卓に浸透していったのか。生活文化やマーケティングの視点も織り込みながら考えた。
「用意するのは豆腐だけ」でシェア約50%に成長
「『丸美屋 麻婆豆腐の素』が発売されたのは1971(昭和46)年で、昨年で50周年を迎えました。現在はレギュラー5品(中辛、甘口、辛口、大辛、鶏しお味※)で年間約5600万個を販売し、メーカー別のシェアは約50%を占めています」
※鶏しお味は2022年1月からリニューアルで鶏白湯味になった。
丸美屋食品工業の村上麻登香さん(マーケティング部 中華即席チーム課長)はこう説明する。入社以来、マーケティング歴は約20年。同社の「釜めしの素」も長く担当した。
レトルト食品である「麻婆豆腐の素」がこれほど長く愛される理由は何なのだろう。
「日本人にとってなじみ深い『豆腐を用いた料理』であること、そして日本人好みだが自分では再現しにくい『中華味』という点があると思います。消費者調査をしても麻婆豆腐が嫌いという人は少ないのです。豆腐を用意すれば調理できますが、別に用意した挽き肉を足したり、ねぎや春雨を足したり、各家庭の味にもなっています。片栗粉を用意しなくてすむのも消費者からは好評です」
奈良時代に唐から伝わったという豆腐は長い歴史を持つ食品だが、意外な一面もあった。
「さまざまな鍋料理にも使われますが、豆腐は名脇役のような存在。湯豆腐や冷奴ぐらいしか主役になりません。麻婆豆腐は数少ない、豆腐が主役の料理なのです」(同)
日本食の定番・味噌汁にも豆腐が入ることが多いが、やはり脇役といえる存在だ。