ベアボック外交を産業界は支持するのか
思えば2007年、首相に就任してそれほど間もなかったメルケル氏は、首相官邸にダライ・ラマ14世を招き、激しい中国の攻撃に晒された。以来、氏は中国の嫌がることは一切言わなくなり(常にアリバイ程度)、商売一筋に切り替えた。一方、メルケル氏はプーチン大統領とは仲の悪そうなシーンを演出しつつ、実は深いところで共感していたとも言われる。ただ、そんな変幻自在のメルケル氏も、トランプ前大統領相手の外交には完全に失敗し、4年間、独米関係を停滞させた。
今後、ベアボック氏がどんな外交を紡ぎ、何を成功に導き、どこから反発を受けるのか、すべてはまだ霧の中だ。しかも、肝心なのは、氏の中国に対する挑戦を、ドイツの産業界がどこまで大目に見てくれるかという点だろう。また、ショルツ首相がこの元気な外相をどのように利用し、どの程度コントロールできるのかも興味深いところだ。
ショルツ新政権は何が飛び出すか分からないガチャ政権だ。16年のメルケル政治に退屈しきっていたドイツ国民にとっては、それはそれで楽しみな政権でもあるようだが、激しい脱線はヨーロッパ全体に混乱をもたらす。そういう意味で緑の党はかなりの危険ファクターでもある。特に、これから世界の列強に揉まれるであろうベアボック氏の動向が注目されている。