多人数での会話で、全員が楽しく時間を過ごすためには、どんな工夫が必要か。銀座の高級クラブ「クラブ由美」のオーナー・伊藤由美さんは「お店でそういった状況になったときに使うのが『お酌』。これこそ日本人の伝統とメンタリティだと思う」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、伊藤由美『銀座のママが教えてくれる「会話上手」になれる本』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。

3人で話している若者
写真=iStock.com/Apisorn
※写真はイメージです

3人以上で話していると孤立する人が出てくる

2人でする会話は、お互いが「話し手」と「聞き手」の役割を交代しながら進んでいきます。2人しかいないのですから、両者は必ずどちらかの役割を担って会話に参加することになります。でもこれが3人以上集まって交わす会話になると、いろいろと状況が変わってきます。

そこで起こり得るのが、話し手にも聞き手にもなれず、役割を持たないまま会話に入れない人が出てくるというケースです。そうした状況で求められるのは、会話に参加している人ひとりひとりが、誰かを孤立させない気配りをするということです。

最小単位の3人のケースで考えてみましょう。2人でのキャッチボールでは必ずお互いにボールが回りますが、3人でのキャッチボールでは、3人が意識して平等に投げる相手を切り替えないと、ひとりだけ全然ボールが来ない人ができてしまいます。

会話に置き換えると、3人が「話す」と「聞く」を適度に交代し合っているときはいいのですが、ひとたびバランスが崩れると、「話す」と「聞く」に加えて、「その2人を傍観する」という立場が生まれてしまうんですね。例えば、Aさん、Bさん、Cさんの3人が話していて、ふとしたことからAさんとBさんはゴルフが趣味、Cさんはゴルフをしないことがわかったとしましょう。

A「Bさんは最近、コースには出ているんですか?」
B「いやあ、行きたいのは山々だけど、週末の出勤が多くてね」
C「......」
A「私もたまに打ちっぱなしに行く程度。下手になっちゃっただろうな」
B「もう身体が覚えてるから、すぐ思い出すでしょ」
C「......」
A「だといいんですけど――。今度、いっしょに回りませんか」
B「いいですね。じゃあ、LINE交換しときましょうか」

話題を共有できるAさんとBさんで盛り上がり、Cさんだけが「傍観者」になって置いてけぼりになっています。すでにこの会話のバランスは崩れかけていると言えるでしょう。