自営局舎の推進を掲げる郵便局長会

郵便局長会は、日本郵便の経営方針とは異なり、局長が局舎を持つ「自営局舎」の推進を重要施策の一つに掲げている。地域貢献に役立つとの名目だが、多額の収入が得られる「既得権益」を守りたいのではないか、との見方は現場の局長の間にも少なくない。

従業員でつくる団体が貸付制度をつくること自体は珍しいことではない。それでも筆者が関心を抱くのは、日本郵便という会社組織が任意団体である郵便局長会の意向に忖度そんたくするあまり、守るべきルールを形骸化させているのでは、と疑わせる節があるからだ。

新型コロナが猛威をふるっていた7月27日、名古屋市のホテル「メルパルク名古屋」では、新たに局舎を建てようという局長42人を集めた「局舎建築予定者研修」が開かれていた。主催したのは、東海地方郵便局長会である。

担当理事は「局舎建築という大事業に挑む大決断をしていただき、感謝している」と述べ、さらにこう続けた。

「東海地方会と支社がとても良好な関係であり、支社店舗担当の交渉力やフットワークも良く、局舎を建てる環境は非常に恵まれている」

複数の局長が局舎建設の体験談を披露したのに続き、あいさつに立ったのは驚くことに、当の東海支社の店舗担当課長だ。

担当課長は「今年度は30局(の移転)を目標にしており、現在は11局まで公募の準備が整っている」と説明し、こう発破をかけた。

「物件を探し始めてから、開局までにかかる期間が約22カ月。長期にわたる総力戦なので、各自が今のステータスを確認し、前に進んでいただきたい」

局長会が平日に主催したイベントだけに、局長たちは休暇を取得して参加したのに対し、担当課長は業務中の参加だ。日本郵便は取材にそう認めたうえで、こう答えた。

「30局という局数は移転等対象局の合計で、局長(保有)の目標数ではない。会社として自営局舎の推進を図っているわけではない」