少年のような笑顔で「宇宙なう」と実況中

日本の民間人として初めて国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の実業家・前澤友作さん。「金持ちの道楽」などと厳しいことも言われるが、そんなものはどこ吹く風。ユーチューブ、ツイッター、テレビ局のインタビューなど、さまざまなメディアを駆使して宇宙体験を発信している。注目されるのは、前澤さんの宇宙飛行が、日本の宇宙政策や宇宙機関へもたらす「破壊力」だ。

2021年12月8日、カザフスタン・バイコヌールで、ロスコスモスの宇宙飛行士アレクサンダー・ミスルキン、日本人宇宙旅行者前澤友作、平野洋三を国際宇宙ステーションに運ぶ宇宙船ソユーズMS20を搭載したソユーズ2.1 aの打ち上げを前に撮影された前澤氏。
写真=AA/時事通信フォト
2021年12月8日、カザフスタン・バイコヌールで、ソユーズの打ち上げ前に撮影された前澤友作氏。

「着いたよ、宇宙だよ。着いちゃったよ。本当にあったよ、宇宙が。(編集部注=国際宇宙)ステーションもあったよ」

12月9日、国際宇宙ステーション(ISS)に到着した前澤さんは、地球との初交信で、興奮気味に語り、ツイッターには「宇宙なう」と初投稿した。

次々と発信されるツイートや動画は、とても楽しそうだ。

「すぐにiPhoneで写真も撮ったんだけど、これほんとにやばくない⁉ リアルだよ⁉」「地球はマジで丸いし、青いです」

少年のような笑顔で、無重力、トイレ事情、歯磨き、宇宙酔いなど、人間が宇宙で暮らすとどんなことに出会うのか、分かりやすい語り口で説明する。

食料品宅配サービス「ウーバーイーツ」の配達員の帽子をかぶって、缶詰めの入った紙袋を宇宙飛行士に手渡したり、宇宙旅行を記念して作ったグッズを「ご好評につき皆さまにも限定販売します」と、ちゃっかり売り込んだり。動画を撮影しているのは、前澤さんのマネージャー兼プロデューサーで、宇宙飛行に同行している平野陽三さんだ。

旅費は、平野さんと2人で約100億円以上と言われるが、前澤さんはそれ以上の宣伝効果がある、と踏んでいるのだろう。

「職業宇宙飛行士」たちは祝福ムードだが…

今年は「宇宙旅行元年」と呼ばれる。米国の宇宙ベンチャーが相次いで成功したためだ。数分程の宇宙体験や、3日間宇宙船の中で過ごすなど、旅の形はさまざまだが、前澤さんは12日間のISS滞在という長期旅行。ゆとりがある。

日本の宇宙機関・JAXAには、7人の宇宙飛行士がおり、ISSに100日~半年ほど長期滞在してきたが、宇宙での仕事は忙しい。実験をしたり、システム管理や修理をしたり、宇宙遊泳で装置を設置したり、分刻みで仕事をこなす。

仕事の合間を縫って記者会見や、首相や子どもたちなど地上との交信にも応じる。前澤さんら民間の飛行士と差別化をはかるためか、最近は「職業宇宙飛行士」という言葉もよく口にする。そんな飛行士たちは前澤さんら民間人の宇宙旅行をどう受け止めているのだろうか。