これからのJAXAは「射場の管理人」?
頭に浮かぶのは、ロケットを民間移管した際の経緯だ。JAXAは長年にわたって、大手製造会社に注文して、ロケットを製造してきた。ただ、製造会社は大手2社だけ。「競争」という概念がなく、ロケット価格は世界と比べて高止まりしていた。
そこで政府は、「H2Aロケット」を製造企業の三菱重工業へ移管し、2007年から打ち上げサービス事業も担わせた。JAXAは、種子島宇宙センターの打ち上げ施設の整備、維持や、安全監理を担う立場になった。開発中の次期大型ロケット「H3」も、三菱重工を中心に、JAXAとの共同開発が進められている。
政治家の間からは「これからはロケットの開発も打ち上げも民間が主役。JAXAの仕事は射場の管理人だ」という声も出た。
ISSに関してNASAは今後民間に移管する予定で、独自に宇宙ステーションの開発に取り組む企業3社を資金面で支援すると、12月に発表した。JAXAも実験棟「きぼう」の一部利用を民間に移管しているが、こうした動きはさらに進む。
JAXAは今、NASAの主導する月探査計画に力を注いでいるが、前澤さんは月探査にも手を伸ばしている。米スペースX社と契約し2023年に月の周りを飛行する旅行契約を結んだ。最初のシートをすべて購入し、同乗クルー8人を募集している。
民でできることは民で、という時代。どんどん民間人が活躍する中、国や宇宙機関はこれから宇宙開発のどんな仕事をしていくべきなのか。考えざるをえない状況だ。
前澤さんの「破壊力」、これからじわじわと効いてきそうだ。