再エネと天然ガスが電力構成の主軸というスペイン

脱炭素化に力を入れるヨーロッパ勢の中でも、スペインはその「優等生」として知られる。これまでスペインは、温室効果ガスの排出が多い石炭火力発電の削減に努めると同時に、再エネ発電の普及を推し進めてきた。現在、スペインの電力構成は再エネと天然ガスを両輪に、それを原子力がバックアップするという構図になっている(図表1)。

しかしその「優等生」ぶりが仇となり、スペインは今年、ヨーロッパで生じた電力危機の影響をまともに受ける羽目となった。

12月5日週のスペイン・ポルトガル電力共通市場におけるスペインの電力の卸売価格はスポット(随時契約)で1メガワット当たり平均185.3ユーロ(約2万4000円)と、この1年で4倍近くも上昇したことになる。

2021年11月6日、バルセロナで行われた電気料金の高騰に対する抗議デモで、「光は吸血鬼を殺し、法案は人間を殺す」と書かれた看板を掲げるデモ参加者
写真=AFP/時事通信フォト
2021年11月6日、バルセロナで行われた電気料金の高騰に対する抗議デモで、「光は吸血鬼を殺し、法案は人間を殺す」と書かれた看板を掲げるデモ参加者

スペインの電力危機は主に再エネ、特に風力発電の不調に起因するものだ。スペインの電源構成のうち風力発電が占める割合は2019年時点で20.4%と、EU27カ国中6番目の高さを誇る。

今夏のヨーロッパは風が弱く、各国の風力発電は軒並み不調に陥ったが、風力発電への依存度が高いスペインはその影響を色濃く受ける形となった。

またラホイ前政権が2013年に再エネの固定価格買取制度(FIT)を廃止したことも、電力価格の高騰につながった。

FITは再エネの普及に大きく貢献したが、一方で国庫の逼迫ひっぱくをもたらし、債務危機後の財政健全化の流れの中で廃止を余儀なくされた。その結果、電力の需給動向が価格に反映されやすくなり、電力価格の高騰の一因となった。