自他共に認める自己チューな人も変わった

【平本】変わります。もう1つ私自身の体験をお話ししますと、昔、自他共に認める自己チュー(自己中心的)な女性とつき合ったことがあるんです。2人で花火を観に行って、私が場所取りしているあいだに「飲み物を買ってくる」と自分の分だけ買ってくるような子です。

【前野】それはなかなかすごいですね(笑)。

【平本】「その性格、直したほうがいいと思うよ」と言ったら「昔からずっと自己チューと言われてるし、私はそういう人間だから」と開き直っている。それで「自己チューと口に出すと原因論になるな」と思って、目的論で関わろうと思ったんです。自己チューの反対は「思いやりがある」だと考えて、思いやりがあるところを見つけようと決めました。

【前野】おお、どうなりましたか?

【平本】寝転んで花火を観ようとシートを広げたら、彼女がかなり広めに芝生で汚れた部分を掃き始めた。もしかしたら、自分の陣地を広げたかっただけかもしれませんが、見方によっては「僕のところまできれいにしてくれている」とも受け取れるので「思いやりあるよね。ありがとう」と言ったんです。ちょっと驚いていたものの、喜んでいるようでした。そのあと、たこ焼きとフランクフルトを買ってきたときも「ありがとう、俺がこれ大好きなのを覚えててくれたんだ。思いやりあるよね」と言いました。もしかしたら、私のためではなくて自分の分だけだったのかもしれませんが(苦笑)、それでも少しうれしそうでした。

それからしばらくしたとき、ついに向こうから「あきおさんも何か飲む?」と聞いてくれたんです。当然だとも言えるし、「やっと気にかけてくれたのか」という気持ちがありましたが、「ありがとう。聞いてくれるなんて思いやりあるね」とお礼を言いました。そうこうしているうちに、どんどん自己チューな振る舞いは減り、思いやりのある彼女になったんです。

Yes butではなく、Yes andで話す

【前野】どのくらいの期間でそうなったですか?

【平本】彼女に関しては数週間で、はっきり変わりました。

【前野】そんなすぐにですか、しかも激変した。

【平本】はい。ちなみに目的論で話すときは、Yes but(それいいね。けれど、ここはダメ)ではなく、Yes and(それいいね。そして、これをしてくれたらさらにうれしい)という言い方にするのがポイントです。

【前野】アメリカに留学したとき、驚いたのがまさにそのことでした。どこの大学のどの教授もみんなが常にYes andで話すんです。1990年前後でしたから、日本ではまだNoやYes butばかりで「どうしてこんなこともわからないんだ!」なんて叱責する先生も珍しくなかった時代なので、「なんてポジティブなんだろう」と衝撃を受けましたね。あれは、勇気づけだったんだなあと思っていましたが、目的論という意味でも合理的なんですね。

【平本】アメリカはヨコ社会が大前提ですから、自然にそうなったのかもしれませんね。

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