まずは市場価値を理解する。それから次のステップとして、今の年収が高いのか低いのか、はたして自分が転職できる人材なのかを考えるべきなのだ。

職務経歴書は魂をこめて書け!

ジョブ型人材が求められる転職マーケットでは、高い専門性を持っているほど評価が上がる。それでは、メンバーシップ型雇用で専門性を磨かないまま今に至ったのであれば、何をアピールすればいいのだろうか。「その場合、手元にある素材を工夫して見せるしかありません」と小林氏は語る。

「まず覚えておいてほしいのは、転職市場では、現在価値が優先されるということ。10年前に営業、5年前に経理、そして今人事をやっているなら、人事としての能力を中心に評価されます。例にあげたような異動の場合、人事としての転職を考えるべきです」

もし現在のキャリアの経歴がそこまで長くないのであれば、「総務と営業で管理部門を担当していた」など、共通項を探し出し、その二本柱を掛け算してアピールする。人事が重視するのは、同じ仕事を続けてきたキャリアの長さなので、可能なかぎり「積み上げた感」を演出するのだ。

転職希望者に小林氏が「魂をこめて書くべき」と強調するのが、自己PRして面接に呼んでもらうためのツール、職務経歴書である。基本は、自分がどんな人物か、これまでの成果、今後取り組みたい仕事など、「面接官に聞いてほしいことだけを書く」(小林氏)。事実を詐称するのはNGだが、正直にマイナス部分までを書く必要はない。負の歴史や自身の弱さについてふれると、「ダメな部分を理解して採用した」という大義名分を与えかねないため、面接官に警戒される可能性がある。

そして面接にこぎつけた場合、小林氏は「ミドル層は面接するな」というアドバイスを送るという。

「面接は聞かれたことを答えるのが基本。しかし、それでは主導権は面接官にあるので、アピールすべきことを言えないまま面接が終わる可能性があります。また面接官が求職者に求めるのは、予定調和ではない対話です。なので、『求人票からこの会社の問題点はこのように捉えていますが、実際はどうなのでしょうか?』などの質問を最初から投げかけて、自分のペースで進めるように心がけましょう。面接というより、ディスカッションしているような状態になるのが理想ですね」

中途採用は企業の問題解決が目的であることが多いため、探しているのはおもに問題解決ができる人材だ。なので会社の問題を突っ込んで聞いて、解決案を提示していくと、ポジティブな印象を与えやすい。さらに小林氏は、謙虚にならない重要性を説く。