企業は時価払いを実現する方法として、成果主義やジョブ型雇用を導入。西尾氏は「さらにコロナ禍以降、リモートワークが浸透したことで、社員の働く姿が見えにくくなりました。なので評価の指標が『成果』にならざるをえません」と今後は「時価払い」型が主流になることを予測する。

年を重ねることで収入が上がらないのであれば、転職や昇進などして現状を打破したくなる。西尾氏によれば、一般的な目安になる「年収基準」が役職ごとに存在する。課長クラスは、500万~700万円(成果による加算は除く、以下同)で、部長クラスは700万~950万円。これが役員・本部長クラスになると950万~1200万円になり、社長・上級役員クラスになると1200万円以上だ。

本来はこうした年収基準を見据えながら、転職や昇進への策を練るべきなのだが、自分の市場価値をよくわからないまま、収入アップを期待するミドルが少なからずいる。

「中途採用希望者と話していると、『今900万円もらっています。せっかく転職するんだから1000万円以上ほしい』という人がいます。『せっかく』という自分勝手な発想になるのは、自己客観視できておらず、市場価値を理解していないから。結果、仕事しても成果が上がりません」(西尾氏)

まず自分の市場価値を知る

人材コンサルタントの小林毅氏も、転職マーケットに無理解なミドルから相談を受けることがあるという。日本企業はメンバーシップ型のキャリアが基本だったため、職種が会社の都合で決められ、専門性を磨くことが難しかった。しかし、今の転職市場では、仕事内容と成果に価値を置くジョブ型人材が求められている。

「メンバーシップ型雇用にどっぷり浸かっていたため、『私、某大企業で課長をやっていました。転職できますか?』という甘い考えで、『私はこれができる。これがやりたい』という話ができません。ゼロからのジョブチェンジが許されるのは、せいぜい第2新卒ぐらいまで。自分の専門性を定めず、キャリアを積んでこなかったミドルが転職マーケットで勝負するのは大変だと思ってほしい」(小林氏)

甘い考えのミドルは、まず自分の市場価値を知る必要がある。識者2名は「転職する・しないにかかわらず」と前置きしたうえで、その方法を説いた。

「1度、転職活動することは有効です。人材紹介会社に登録して、年収の希望を出し、反応があるかどうかを確かめたらいい。もしくは副業を認めている企業だったら、本業に近い副業を試してみましょう。自分のやってることが売れるのか、どのぐらいの値段がつくのかわかるので、正確な市場価値が把握できます」(西尾氏)

「お薦めは、職務経歴書を書いてみること。今までの仕事と自己PRをまとめることで、キャリアにおいて足りないこと、自分の売れる部分・売れない部分が可視化されますから」(小林氏)