賃金の低いP&Gが就職人気の高い理由
欧米の流通業で相対的人件費を下げるのに貢献をしているのは社内昇進の仕組みである。
アメリカの流通業では、現場で作業をする日給社員と、企画・判断・管理の仕事をする月給社員とに分けられていることが多く、明確な区別がある。しかし、月給社員は、日給社員の中から選抜されるのが普通である。日本の用語を使えば、パート・アルバイトの中から正社員に登用されるのである。
このような人材登用の制度は、単一入り口方式と呼べるかもしれない。H&Mやイケアなど北欧の流通企業も単一入り口方式をとっている。現場で働く人々は、将来より高度な仕事につける可能性があるからより真剣に仕事に取り組んだり、自ら能力開発に取り組んだりする。それが相対的人件費を下げるのに貢献している。
これに対して日本では、企画・判断・管理の仕事への道が開かれている正社員と、現場の作業をするパート・アルバイトとは入り口が違う。複数入り口方式といえるかもしれない。この方式では、パート・アルバイトの入り口から入った人々は、正社員になることは難しい。
複数入り口方式では、パート・アルバイトの人々の意欲を引き出したり、能力を開発したりするのは容易ではない。単一入り口方式のほうが相対的人件費が低くなる可能性が大きい。日本でもこのような単一入り口方式を考えてみるべき時期にきている。
実際に日本でも単一入り口方式に近いシステムをとっている小売りチェーンがある。しまむらである。しまむらでは、店長の3分の1は、パートから登用された女性だという。